友人のオープンハウスにおじゃました帰りみち、
いろいろ思いをめぐらせながら、今歩いてきた道をゆっくりとふり返った。
私のオープンハウスの楽しみ方の1つにその家に着くまでの「道すがら」がある。
他の建築家が設計した家を拝見できるのはもちろん楽しみであるが、
その家に住む人がどのような町に暮らすのかにも興味がある。
建築家がその敷地にどのように向き合ったのか。
またその場所の空気をどのように受け止めてどのように消化したのか。
それは意識しなくとも、設計した建築家の肉体を通して
立ち上がった空間に密かに現れるのでないかと思う。
駅の改札をでたところからオープンハウスははじまっている。
商店街を歩きながらここで買い物したり・・この町での生活をイメージしてみる。
お会いしたことのないその家の住人のように。
先日行ったオープンハウスはそのような意味でもとても楽しかった。
駅を降りてから、大学のある通りを抜け、とても雰囲気のある古いマンション群の門をくぐると
鬱蒼とした緑が見える中庭に出る。時間の流れ方が違う別世界に出会う。
まるで「千と千尋の神隠し」のオプニングのよう。空気の質感が変わり、
一瞬にしてタイムスリップでもしたような、そんな不思議な雰囲気に囚われる。
さらに、古い学校の校舎にでも迷い込んだかのような、細い渡り廊下に似た空間を
くぐりぬけ、目指す5号館にたどり着く。時間にしてほんの数分程度のことではあるが、
こどものころに自分だけが知っている抜け道を思わせるような空間だった。
この道を歩くことでたどり着ける空間。こんな家路に憧れる。
はじめてやってきたのに、何となく頷けるような場所。
外からの雰囲気が住宅の内部まで違和感なく繋がっていく。
私が設計した家にもそんな空気が流れていたらと、つい想像してしまうのだ。