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DIARY-TSUBOIARCHITECTS OFFICE
悪者

現場は大勢の「人の力」で成り立っている。だから現場監督や職人さんとのやりとりはできるだけ敬意を持って接するようにしている。礼節をもって接することで、お互いに気持ちよく仕事ができるし、それが結果としてよい仕事につながっていくのが理想だと思う。仕事に感情は持ち込まないほうがよい。

しかしながら、人はそううまくはいかないもので、いいかげんな仕事を目にすれば声を荒げてしまい衝動にも駆られる。そんなときは昔の未熟だったころの自分を思い出して気持ちを落ち着かせる。この仕事をはじめたばかりの頃、現場事務所に寝泊りしながら、朝から晩まで毎日現場に張り付いていた時期があった。若さゆえの過剰な責任感から感情の起伏が激しく、よく現場監督や職人とも衝突した。

そんな経験から、個人的な感情は現場の雰囲気を悪くするだけでなく、誰にもメリットをもたらさないことも次第に理解できるようになった。それ以降は腹の中に何か持っていても、そこはぐっとこらえて冷静にやりとりできる心得のようなものを身に着けた。

いい加減な仕事というのは、気持ちの緩みと想像力のなさに起因する。集中力を欠いていると現場やまわりの人間の士気が落ち、指示の曖昧さが作業のミスにつながってくる。想像力を欠けば、自己中心的な考え方がまわりに及ぼす影響に気がつけず、他の人の作業を無駄にしたり、過失を引き起こす原因にもなる。

それを未然に防ぐためには、やはりはっきりとした意思表示をすることが大切だ。何も言わなくても、こちらの意図を汲み取って理解してくれる人もいるけれど、あまり厳しくないからとつい気を緩めてしまう人がいるのも現実だ。人の気持ちをあてにせず、こちらの意図をしっかり伝えた上で、相手の考えにも耳を傾けることが大切だ。コミュニケーションとはそういうものだと思う。

たまに、うるさい人だと顔をしかめられることもあるけれど、施主の大切な資産を守るために、人にどう思われようとも必要なときは礼節をもって、正しい悪者になろうと思う。



posted by Toki Tsuboi | 20:37 | 現場のこと | comments(0) | - |
休み明け
夏休みが明け、現場も再開です。休み中は何をしていたかと言うと・・打ちあわせ+図面を描いてすごしました。悲しいかな、夏休みは意外にそんなものです。あ、ハリーポッターは見ましたけど(笑)

今日は朝からS邸の現場で定例打ち合わせ。休み中に描いた、枠や階段の詳細について、現場監督や大工さんと意見交換。ドアや引戸、障子など建具が実際にどのように「おさまる」のか、ミリ単位で検討を行います。

内装造作の打ち合わせは大工さんも興味深深。私がどんな図面を描いてくるのか、またどんなアイデアを盛り込んでくるのか、駆け引きのようでもあり、「将棋」はやったことないですが、たぶんそれに近い感じかもしれません。特に、建具枠や階段などは、細部(ディテール)によって見え方が大きく変わってくるので、設計にも神経を使います。

私はあまり奇想天外なアイデアは出しませんが、使いやすさや耐久性を考えながら、きっとこうなっていたら、もっと使いやすいし、すっきり見える。そういうところに執着する傾向があります。

まずこちらが図面を出すと、大工さんから「こうやるとうまく造れるな」と提案があったり、熟練の大工さんからワザを引き出すのも打ち合わせの醍醐味です。若いころはよく現場に通い、大工さんからいろいろ教わりました。職人さんからの生の情報は本当に貴重なのです。

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大工さんと階段製作の打ち合わせ。階段に引き出しを造りつけようと思う。



posted by Toki Tsuboi | 19:21 | 現場のこと | comments(0) | - |
ショールーム見学。
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神奈川県藤沢市で住宅を設計中のKさんご夫妻と、とある住宅設備メーカーのショールームへ。キッチンやユニットバス、照明器具など、今回の設計に取り入れている設備機器を確認するため、横浜までやってきました。

私たちの設計では、キッチンや浴室なども含め、オリジナルでデザインすることも多いですが、施主さんがメーカー品を使うことをご希望された場合は、可能な限り一緒にショールームに行って現物を確認するようにしています。

さすがメーカーのショールーム。その展示品の多さに驚きます。担当の営業の方にお目当ての製品を案内していただきます。展示してあるのはメーカー指定の標準タイプ。なるほど標準装備は一見にしかず。ただしメーカー品で厄介なのはとにかく標準以外のオプションの多さ。

すべての内容を理解するには、営業の人の話を聞いただけではわからないこともたくさんあります。ショールームの中で冷静な判断をするはなかなか難しいことですが、設計者である私が隣にいることで、施主にも安心して営業の方の話を聞いていただくことができます。
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今日の目的はユニットバスと照明器具の確認です。
ユニットバスはサイズやデザイン、必要なオプション品などを一緒に選びます。
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照明器具は実際の明るさや、光の色などを確認します。
調光や間接照明の演出方法などは、実際に近い感覚を体験していただけるので
とても便利です。
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ついでにキッチンコーナーで作業台の高さや細かい寸法などもしっかりチェック。奥様の作業しやすいカウンターの高さを実際のキッチンを使って検証します。最近はカウンター高さが90センチのキッチンが流行していますが、背の低いKさんはワンランク下の85センチのほうが使いことがわかりました。

料理をするときの作業の流れや、Kさんのクセなども聞いたりしながらキッチンの利便性について意見交換。Kさんにとってそうじのしやすさは大きなポイントのようです。

ランチをはさんで、午後は北欧インテリアのお店を見学。ダイニングテーブルやイス、北欧の照明器具など見所も満載。休日のショールームめぐり。設計打ち合わせ以外の、施主と共有する大切な時間です。



posted by Toki Tsuboi | 12:56 | 設計進行中 | comments(0) | - |
W邸打ち合わせ

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会津若松のWさんご夫妻との設計打ち合わせ。祖父母・父母・親子3代が同居するための家づくりです。若夫婦のお子さんをいれれば4世代。約半年間続けてきた基本設計もいよいよ大づめです。

家族が同居するために必要な条件や、大家族だからこそ起こりうる問題などにも気を配り、ひとつひとつクリアにしていきながら、ようやく最終案にたどり着きつつあります。家づくりにおいて、このプロセスをご家族みんなで通ることに私は大きな意味があると思っています。1歩1歩着実に納得してから前に進むこと。設計に近道はありません。将来振り返って、今回同居したことがご家族にとって最良の選択だったと思えるように。そこが目指すべき目標です。

家族の仲にも、気配りや礼儀を大切にされるWさんのお人柄。プランニングにも家族への細やかな配慮が自然と表れていきます。雪国であるこの地域の気候的な条件や、3世代の家族がひとつ屋根の下で暮らすことをイメージして、ゆるやかな大屋根のある家をデザインしました。

磐梯山を臨む、田園風景に似合う大らかな家。光の通り、風の通り、視界の抜け、声の通り、それらが日々の暮らしの中に溶け合い、空間として素直に表現されること。それがこの家を考える上でのテーマになりました。来年秋の竣工をめざして、会津の四季を楽しみながら、実施設計を進めていきたいと思います。


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1/50スケールの模型ができました。


posted by Toki Tsuboi | 17:06 | 設計進行中 | comments(0) | - |
屋根工事→断熱工事

 S邸は屋根工事がほぼ終わり、外壁の断熱工事に入っています。
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外壁はフェノールフォームの外張り断熱。(屋根も同じ)骨組みをすっぽりと包む断熱方式なので、熱ロスが少なく、室内の温度環境を一定に保つことができます。大工さんも涼しい中で作業ができるので効率も上がるらしい・・(笑)。断熱を強化することで夏のエアコン、冬の暖房エネルギーを少なくすることができます。ピンクの気密テープを断熱材の隙間に張ることで、隙間から熱が逃げるのを防ぎます。
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屋根はガルバリウム鋼板というアルミと鉄の合金を使っています。軽くて耐久性のある材料です。葺き方にもいろいろ種類があって、今回は「立て平葺き」という方法を採用しています。屋根に落ちた水を一方向に均等に流せます。似た方法で「瓦棒葺き」という葺き方もありますが、屋根に水が入りにくく、芯木を腐らせないようにするには「立て平葺き」のほうが適しているようです。

何となく、金属屋根は暑い・・というイメージがありますが、表面が遮熱処理されていること、また屋根のてっぺんから温まった空気を廃熱するように設計しているので、思ったほど暑くはなりません。また屋根面でしっかり断熱をしているので、熱が室内に伝わることがなく、小屋裏空間(ロフト)も快適です。地震に強い家をつくるには、まず何をおいても屋根を軽くしておくことが重要です。瓦のように重いものを載せると、その分揺れも大きくなるので、そのような点でも金属屋根は適しています。

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1階のリビングには幅2間の大きな窓をとりつけています。あえて腰窓にしているのは、この先にある駐車場の車の頭を見えないようにするため。車の頭がいつもリビングから見えるのはあまり心地よいものでありません。その分、高さのある窓にして室内に光をたくさん取り入れられるようにしました。

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外壁に×印に構造補強が入りました。(筋交いといいます。)長期優良住宅にて耐震等級2を取得し、高耐震の建物になっていますので、地震保険加入の割引制度にも対応可能です。
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2階ロフトから下を見る。大工さんが作業している場所は2階の主寝室。ここは天井の高い気持ちのよい寝室になりそうです。

posted by Toki Tsuboi | 12:51 | 現場のこと | comments(0) | - |
考える。そしてつくる!

 先日、現場打ち合わせでのひとコマ。

2階のバルコニー手摺を木でつくりたいと考えていたのだが・・予算の関係で工務店からアルミの既製品手摺を紹介された。理由は木でつくるよりコッチのほうが安いから・・。確かに、理由はわかるが採用できるかどうかはまた別の問題。

我々の設計では、建具や手摺などを含め、できることなら既製品は使わずに現場で製作したいと思う。断っておくと、別に既製品が嫌いなわけではない・・。いろいろ選択肢がある中で、安易に既製品を使うことが必ずしもベストではないし、正直コレは!と思うものが既製品の中にはなかなか見つからないことも理由の1つだ。

それもそのはずで、既製品の多くはハウスメーカーに採用してもらうために商品開発を行っていることが多いので、結果としてハウスメーカーのイメージに偏ったモノが多くなる。見かけのレパートリーが増えても基本的な発想はほとんど同じなので私たちにとっての選択の幅はなかなか広がらない。もちろん既製品の中にも優れたものはたくさんあるし、特に窓や水まわりなどは既製品を使うほうがよい場合もある。

ただ私たちのようなアトリエ事務所に設計依頼をされる施主の方々はそれを安易に取り入れることを望んではいない。プランにしても外観にしても、機能性と同じようにデザイン性にも優れた家を期待しているのだ。その期待に応えることが私たちの使命であり大切な役目でもある。

確かに一部に既製品を採用することでコストを安くできるところもある。オリジナルでつくることに執着して、予算の枠を大きく超えてしまっては元も子もない。既製品を部分的にうまく取り入れて、それを逆に使いこなすくらいのアイデアや工夫も必要だ。

おこがましい言い方だけれども、最近の既製品はデザインも格段によくなった。モノがなかった時代に建築家が考え出したアイデアの数々。企業もよく研究しているのだろう。ただ出来上がった商品が表面的に見えてしまうのは何故だろう。形(商品)になった瞬間にその魅力を失ってしまうような・・。

ある照明デザイナーがこんなことを言っていた。
「形だけをまねるのではなく、その理念をまねてほしい」・・と
だから私たちは既製品を使うことを手放しでよしとはできない。

既製品を使う、使わないも含めて、その建築をどのようなものにしたいのか、
結局のところ、そこを人一倍よく考えて、丁寧につくることが大切だと思う。




 

posted by Toki Tsuboi | 12:33 | デザインの手法 | comments(0) | - |