心に残るもの
2007.04.30 Monday
学生時代の友人と帝国劇場にミュージカルを観にいきました。ミュージカルを観るのも学生時代の友人に逢うのも久しぶりだったので、とても楽しい時間でした。谷口吉郎氏設計の帝国劇場は風格のある劇場で、中に入ると観る側にも演じるに側にも「ここは特別な場所」を感じさせる心地よい緊張感が漂っていました。舞台が始まると照明が落ち、演じる側と観る側は一体になります。この時ふと劇場の魅力はこの瞬間にあるのではないかと思いました。劇場の主役は「演劇」であること。設計という視点から見れば劇場施設について考えなければならないことはきっと沢山あるでしょう。デザインのこと、お金のこと、集客や経営のこと、面積のこと。どれも大切なことだと思いますが、本当に大事なことは「演じる側と観る側」の関係を自然なかたちでつなげることだと思います。座席が座りにくくて演目に集中できないことがないように、空間には音楽が流れ、さっきまで見えていた壁や天井の素材はそっと消えてなくなるように。演じる側と観る側の世界だけが浮かび上がるように。「今日の舞台は楽しかった」ことが一人ひとりの心に残ることが劇場空間にとってとても大切なことだと思いました。