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現場監理(げんばかんり)とは聞きなれない方もいらっしゃるかもしれません。
おなじ発音で現場管理(げんばかんり)はよく聞きますが、これとは一線を画す業務です。
「管理」は=現場の段取りや、資材の手配が主なもので、工務店の現場監督が行うの一般的な業務です。
一方「監理」は=設計内容との照合、正しく施工がなされているかの確認、詳細図面の作成、設計意図を現場に落とし込む専門性の高い業務です。
これは主に設計者が行うか、それに同等の能力を有する「建築士」が行います。
最近、住宅メーカーによる建築基準法違反、施工不良の問題が後を絶ちません。
大手住宅メーカー、ローコストビルダー、工務店を含め、監理業務は実態としてほぼ行われていません。
お客様の目線で、正しく家をつくるためには、監理は本来なくてはならないはずなのですが、
実は多くのハウスメーカーがこれを不要と考えています。それゆえ現場のチェックは皆無となりやすく
職人のミスや、勘違いも含めて、何が起きても見過ごされてしまいます。
設計図に示されていることが現場に正しく伝わらないばかりか、住宅の品質に影響を及ぼしてしまう危険があります。
なぜこのようなことになっているのか、これはハウスメーカーの大きな問題点です。
監理者がいる場合はお客様の代理人として現場を監理します。それゆえ、大小関わらず間違った施工に対しては
指摘をして正しく改善させることができます。また設計図の内容を正しく理解しているからこそ、第3者として
適切な指示を現場に出すことが可能であるとともに、手抜き工事の防止やミスの抑制ができるのです。
設計者と施工者が同じ会社である住宅メーカーが敢えて監理者をつけないのは、工期優先で現場をすすめたいことが最も大きな理由です。
工期を優先するには現場の余計な手間を減らし、職人にかかる費用を抑えたいというが本音かもしれません。
安く工事を請け負わなければならない職人は、できるだけ早く工事を終わらせて次の現場に行きたいと思うようになります。
その過程の中で、監理者が現場にいるというのは都合が悪く、元請けのメーカーにとっても損になります。
毎日繰り返される成果主義の中ではお客様のために仕事をする意識は消え、そこに甘さが生まれます。
また、住宅メーカーの人間が現場をチェックしても、会社に都合が悪いことは隠蔽されてしまう可能性があります。
例え予期しない問題が発覚しても、その声が上に届かないことも十分にありえます。
ここのところ、立て続けに明るみになっている施工不良の問題は「監理」をしない現場のモラルの低下が原因となっていますが
生かさず殺さずのところで仕事をさせている元請け側の責任が大きいことは確実です。
大手だから安心だろう、多くの人はそう思って住宅を依頼されるはずです。
大手住宅メーカーによる建築基準法違反、施工不良問題は、今回内部告発によって明るみになりました。
その会社の中には問題にはじめから気がついていた人がいたという証です。
内部告発に至るまでには壮絶なことがあったに違いありません。
報道によれば是正対象になる住宅の数は全国で2000棟を超えるといいます。
大手企業の売上至上主義が招いた大変残念な事件です。
まずは住宅メーカーに依頼する前に、「監理者はどなたですか?」と一言聞いてみてください。
「現場監督がしっかり行いますよ。」という会社は完全にアウトです。
「会社として責任を持って施工しますから大丈夫ですよ。」やはりこれもアウトです。
監理者をきちんと置いている住宅会社こそが、本来お客様にとって信頼ができる会社です。
自分の会社を過信しないこと。そこにこそ企業のコンプライアンアスが必要です。
住宅メーカーは現場監理の重要性を今一度考えてほしい。
住宅メーカーの建築基準法違反、一連の施工不良問題。これが氷山の一角でないことを切に願います。
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改修工事中に起きた火災で、ニュースではノートルダムの尖塔部分が激しく燃え落ちる様子が映し出されていた。
ノートルダム大聖堂といえば建築に詳しくない人でも一度は聞いたことがあるほど、
12世紀に建てられたゴシック様式の最高傑作である。ユネスコ世界遺産にも登録されている。
建築を学んだ人であれば独特な構造様式であるフライングバッドレスのことを知らない人はいないだろう。
私もパリを訪れた際にノートルダム大聖堂は見学した覚えがある。一報を聞いて大変残念な気持ちになった。
火災から2日後、フランス政府は大聖堂の再建に向けて早々に発表を行った。
事態は深刻なものの、再建に向けて動き出したフランス政府の対応はとても迅速だ。発表の内容を聞いて驚かされた。
大聖堂の再建に向けて、世界の建築家から再建案を募るという大胆な構造だ。今回燃え落ちてしまった尖塔部分は、
提案があれば復元しなくても構わないという。もちろん現状の復元案もあってしかるべきとしているが、
新しい要素を加えることも厭わないというのだ。ちょっと日本では考えられないような判断だ。しかも2日で。。
実は歴史的街並みや建造物を多くもつヨーロッパの国々では、長い歴史の中ではたびたび起こる話だったりする。
日本でも過去の歴史の中で起きた戦争や天災などの理由で歴史的建築物が焼失したり破損したりすることがある。
このようなことがあるたびに、その時代の人たちの力によって再建を果たしてきたことも含めて、
歴史的建造物としての評価がなされてきた。100年単位で残る建築は残そうとしたその時代の人々意思の結晶である。
そして火災や改修のタイミングでその時代にふさわしい建築へとリニューアルを遂げてきた。
それはノートルダム大聖堂も同じである。
今回の火災が横に広がらなかった要因として、中央の大きな吹き抜けが功を奏し、火や煙を上から抜けたことや、
構造体を外に出す形式であるフライングバッドレスが中央の空間を両側から支えているおかげで、構造の倒壊をまぬがれているようにも見える。
これは歴史の中で繰り返し起きた火災などを教訓としながら、当時の建築の安全を守るために考え出されてきたものだろう。
防火の考え方がデザインや空間のあり方にも大きな影響を与えているのかもしれない。
大聖堂の火災は大変残念なことだがフランス政府が迅速に判断をした背景には過去の歴史や文化に対する敬意と、
現代を生きる我々もその歴史の波の一部にすぎないことを理解した上で、受け継いだ文明を積極的に引き継ぐという思考が働いたのだろう。
歴史的建造物はいつの時代も文明を動かしていく役割を果たしていくものだからだ。
日本でも歴史の中で同じようなことがたくさんあった。
今残っている歴史的建築物は、完成当時は時代の最先端を走っていたものだ。
つくった人々の意思も含めて、長い間受け継がれてきた。
保守的な意見として伝統的なものは有無を言わさずそのまま残すべきだ。と言う人もいるかもしれないが、
その時代の思想のもとに改良を重ね、次の時代への発展の根を植えつけ、文明を引き継いでいくことが、
本来の意味での伝統といえる。そのような意味で様々な分野で伝統論争は日本でも昔からずっと行われてきた。
昔の棟梁や日本建築を築いた偉人たちはきっとそのような思いを持ってその建築物を創ったに違いない。
最近日本では歴史・文化的に見て大変貴重な建築物でも、その価値についてろくに調査もせずに、
政治的な理由だけで簡単に取り壊してしまっている。とくに公共建築物にその傾向が強い。
次世代へのレガシーということが盛んに言われはじめているが、まだまだ経済原理が最優先で、
根底ではその意識にはほど遠いように見える。歴史や伝統というのは今の日本人にとっては単なる学識として
覚える対象でしかなくなってきているのだろうか。
ノートルダム大聖堂の火災と再建の報道は同じ時代を生きるものとして歴史意識の違いを感じる出来事だった。
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広告などで住宅の長期保証というものをよく見かける。
30年から長いものだと60年の保証が延長できるという。
安全安心な家は長期保証が当たり前の時代、そのような内容だったようと記憶している。
日本人はとかく保証という言葉が好きだ。当の自分もそう思うことも確かにある。
「長期保証」という言葉は住い手の不安な気持ちにダイレクトに響く。
保証が切れると言われるとなぜか急に不安になってしまう。
しかし長い保証こそが安全の印、ということについてはこれは少し検討してみたほうがよい。
保証の実態が何なのかをよく調べてみると隠れていたものが見えてくる。
まず前提として、物事が何十年も保証されるなどということは現実には有り得ない。
しかしそれを建前上可能にしているのは、ある仕組みがあるからだ。
今から十年ほど前に、住宅瑕疵担保履行法という法律ができた。
この法律の趣旨は住宅を建てる事業者は構造体の瑕疵と雨漏りについて10年間の保証の義務を負う。
また建てた住宅会社がなくなっても、保険に入ることで他の業者でも修復にかかる費用の一部(または全部)を
国の保険で賄うことができるというもの。確かに住宅を建てる側にとっては最低限必要な保証制度であるように思う。
これに目をつけたのは大手の住宅会社だ。
この瑕疵担保履行法では保証期間を任意で延長することができる。保険の割増しや定期的なメンテナンス、
劣化部分の修繕工事をしていくことで保証期間を伸ばすことができる。
住い手にとっては言わなくても10年間は無料で点検してくれるので安心に感じるかもしれないが、、
これはその後の修繕工事を受注するための営業の方便になる。
10年ごとに設備機器の更新も必要になるし、そのタイミングでリフォームをする人も少なくない。
施工した住宅会社は、この長期保証プログラムのおかげで修繕やリフォーム工事の受注を自動的に受けられる。
メンテナンスを断ったり、他社でひとつでも工事をすればその時点で保証の対象外となるからだ。
一度建てたお客様は長期にわたりその会社にずっとお金を払い続けなければならない仕組みになっている。
そもそも瑕疵担保の保証とは何か。具体的には「構造体の瑕疵」と「雨漏」というこの2点が対象になる。
生活していて起こる一般的な不具合や、時間の経過による経年劣化、天災による異常については保証対象にならない。
要するによほどのことがない限り起こりえない部分についての限定的な保証だいうことを理解しなければいけない。
確かに、住宅に住み続けていくには定期的にメンテナンスをしていくことはとても大切だ。
維持管理をすることで住宅の寿命も格段に変わってくる。実際に住宅メーカーで使われている建材で20年以上
何もしないでも大丈夫なものはひとつもない。よって10年過ぎた住宅は修繕がどうしても必要になる。
長期保証は点検(メンテナンス)は無料であるが、点検の結果、高額な工事見積書が届くことが多い。
無料で点検してくれて安心、ではなく無料で点検するのはあくまでも修繕工事を勧める営業になるからだ。
例え修繕工事が必要になった場合でも、少しでも安い方法を考えたいし、業者も自分で選んで決めたい。
そう考える人も多いと思うが、長期保証を盾に最初に建てた会社以外では保証の延長はできない。
そう言われれば従うしかないだろうし、相見積もりもとれない。言いなりの工事にいいなりのお金を
支払うしかないということになる。家を建ててから10年後、それに気づくことになる。
大手の住宅会社であれば少しの工事でも費用が大きくなるので、細かく出費がかさんでいく。
60年の長期保証のプランなどに入れば、積み重なれば家がもうひとつ建つくらいの膨大な工事費を支払うことになるだろう。
果たしてそれが悪いかといえばそうではない。あくまでも国の住宅政策に沿った形ではあるからだ。
住宅が定期的な修繕なしで長持ちするようになれば、本来住宅会社は仕事を失ってしまう。
だから今後、修繕工事は彼らの生命線となってくる。
本来この制度の趣旨は、住い手自ら住宅を維持管理していくことを促し、住宅の寿命を少しでも長くしていくことを目的に
つくられたものだ。スクラップ&ビルドの世の中を少しでも解消し、資源を大切に使い、住宅の寿命を少しづつ伸ばすことが目的であったはずだ。
そのような意味では修繕する会社はどこに頼んでも構わないはずだ。
長期保証で一番怖いのは、保証を名目に暴利を貪られてしまう可能性があることだ。
60年先のことは正直だれにもわからない。そもそも住宅産業が出来てから数十年も経っていないわけで、
長期保証プログラムができたのもここ数年の話である。十年後には当然のように保証内容も変わっているかもしれないし、
制度そのものが破綻しているかもしれない。昨今社会問題になっている長期家賃保証(サブリース)がそのよい例だ。
それよりも30年以上住み続けていける家をきちんと考えてつくることのほうが明らかに意味がある。
そして維持管理は自分のペースで、計画的に行っていくことのほうがはるかに堅実的でなないだろうか。
リフォーム詐欺などを避けるためにも、自分の家の状態を知り、正しい知識を得ることに力を使うべきだと思う。
構造体や雨漏り瑕疵は初期にその症状が現れる。そのため10年の保証があれば本来十分なものだ。
例えば仮に60年前の住宅を現代の生活で使えるものだろうかと考えてみる。そうであってほしいと思う反面
今の時代の生活にあわなければ、それを使い続けていくことはできないだろう。
レアケースの古民家としては残る可能性くらいはあるだろうか。
孫の代でも保証が残るような家にしたい、その気持ちはとても尊い。
しかし今つくられている一般的な住宅で60年後に孫がそれに感謝する日がくることは極めて低いと言わざるを得ない。
ヨーロッパのように100年単位で古い家を大切にする文化は今の日本にはまだないが、これからそうなっていくことを願う。
この考えに向き合うのなら、60年経ってもしっかり使い続けられるような建物をつくる意識を業界全体で持たなければならない。
現代の価値が将来クラシックとして残り続けるような価値の創出だ。
乱暴な言い方になってしまうが、薄っぺらい建売住宅を毎年のように量産し続ける今の業界では本来の意味での長期優良住宅は
実現できない。今はただ住宅会社の売上げを継続的に保証する制度でしかない。
住宅は受け継ぐ人が残そうと努めない限りは残らない。古くてもよいものには価値を与える法整備が必要だ。
住まいがそのような魅力あるものになれば、行き過ぎた保証など不要になるのではないだろうか。
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4月10日、聞くところによれば日本で一番遅い入学式だそうです。
この日を一番楽しみにしていたのは娘本人でしたが、入学式を終えて本人なりに緊張していたのか家につくなり
眠くなってしまった様子。
なぜ日本で一番遅い入学式なのか、出席してみてその理由がわかりました。
この日のために、学校はもとより6年生から2年生の在校生たちが、1年生を迎えるための準備に関わり、
いろいろな企画をしてくれたということです。
入学式当日は、6年生は入ってきた1年生の手を引いて1人ずつお話をしながら会場まで案内してくれました。
5年生は入学式の会場構成を担当し、椅子をならべたり、横断幕やくす玉をつくって待っていてくれました。
4年や3年生は手づくりのプレゼントをつくりそれぞれに手渡してくれました。
2年生は歌や踊りを披露して、1年生の気持ちを和ませてくれました。
また、当日までの間にたくさんの歌を練習し、演出を考えて、全校生徒たちで歌ってくれました。
今日の主役は1年生だから!子供たちのそんな思いがとてもよく伝わってきました。
これから先の1週間の間、それぞれの学年が1年生の教室を訪れ、いろいろなことを教えてくれるそうです。
自分が1年生で入ってきた日のことを思い出し、彼らの気持ちに寄り添おうとしてくれている彼らがとても頼もしく感じます。
子供たちが中心となり、準備に手間と時間をかけた気持ちのこもった入学式。
小学校の入学式はやはり親としても特別なものがあります。
素敵な時間に立ち会わせていただいたことに感謝したいと思います。
さて、明日から学校です。学校に行くのが楽しみになりますように。
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プライベートな記事ではありますが、卒業の記念にここに記しておきたいと思います。
3年前にまだ小さかった娘、幼稚園の面接では何もすることなくただひたすらに泣いていました。
子供はそういうもの、として素直に受け入れてくれた幼稚園のみなさんには本当に感謝しています。
娘の通った幼稚園は、子供のためにできることは関係者すべての大人が力を合わせる、そういう幼稚園でした。
子供が楽しいと思うこと、自分が夢中になれる世界を自分で見つけられるように、
子供がやりたいことはとことんやらせてくれました。
親たちも人形劇や合唱、夏にはお父さんたちの太鼓、お楽しみ会の準備や、毎日のお弁当づくり、卒業を祝う会の企画運営、
特にお母さん方は忙しい中本当によくがんばりました。私自身にとっても、そういう場所で娘と時間を過ごせたことは、
本当に楽しくよい思い出になりました。
この場だから言えることですが、教育というのは自由でよい、私は心からそう思っています。
「自由」という字は自分に由ると書きます。それは安に場当たり的な自由を許すということではなくて、
子供の自由観を一緒に発見し、育てるということに価値を見出すことではないかと思います。
親である私たちも自由とは何かを子供と一緒に考え、それを追体験する貴重な機会に恵まれること。
これほどありがたいことはありません。
子供が大人の都合に振り回されることから逃れることが実はどれほど難しいことか。
子供の将来を考えるあまりに親の思いだけが先行していないか、親の期待する子供の姿を無意識におしつけていないか。
それに気づかされ、考えてきた毎日だったと思います。
大人がダメというのは実は簡単なことで、理由を掘り下げれば、大人の都合のほうが多いような気もします。
子供のためと言いながら、実は自分の常識や理想という型に子供をはめ込もうとする意識、
しつけの根底にはそんなことも少なからずあるものです。
大人が自ら変わること、今までの常識を捨てること、子供と共に成長する、もう一度自分の考えや生き方を見直す、
親として教育とは「共育」であることを私もこの3年間で学んだように思います。
教えと学びは本来同じことなのかもしれません。
娘の卒業は私たちにとってもひとつ節目。4月から、娘は1年生になります。
これからまた6年間、いろんな人たちと出会い、いろいろな経験を積み重ねていけることを
楽しみにしています。
春休みの今日、娘と2人ではじめてアイススケートをしてきました。
テレビでスケートをしていたお姉さんに憧れを抱いたようです。
2人で夢中になってスケートをしたよい1日となりました。
今日の記念にこの記事を記します。
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埼玉県北本市で進行中の2世帯住宅の現場です。
春らしいお天気になり花粉の量も絶好調でくしゃみが止まらない中での現場定例打ち合わせ(笑)
外壁工事がほぼ完了し、ワインレッド&ブラックメタルの外観が現れました。
この瞬間というのは、まだ現場は終わってないものの、お客様にとっても私にとっても、
共に歩んできた道のりの1つの到着点を見たのような気分にさせてくれます。
未熟ながら産声をあげた我が子のような、そんな感覚に近いもの。
外観は窯業サイディングとガルバリウム鋼板の組み合わせ。
窯業サイディングは住宅では最も多く採用されている外壁材です。
多くはハウスメーカーや工務店向けに材料が造られているため、
建築家の仕事の中では、採用頻度は実はそれほど多くはありません。
私は建築材料としての使い方に注意すれば、窯業サイディングも十分採用できると思っています。
ここでポイント、使い方に注意とは、やはりハウスメーカーにはないデザイン的な工夫をすることで、
ちょっと意外な色の組み合わせや、面の広さや影のつけ方、開口部の配列などを工夫すると
外観の見え方は全く違ってきます。むしろ材料の特性を上手く生かせば、建物に存在感が生まれます。
この家では、黒のフレームの中に埋め込まれた赤いボリューム、大きく見せる面と、コーナーを意識した凹凸のある
開口部、外壁面を窓の配列で3分割にみせる手法=建物を実物より大きく感じさせないことなどを
特に意識してデザインしています。それらがうまく融合して、全体のバランスとして心地よいものになって
いたら成功です。建物は住む人の個性が現れるもの。それが街にとってもプラスに働くものであってほしい。
現場に同行したお客様からも、すごく「いい家」になったとお褒めの言葉をいただきました。
やはり、目の前のお客様からお褒めの言葉をいただけるのは本当にうれしい。
無事、成功したようです。
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大田区の2世帯住宅、外部にかかっていた足場が解体され、建物の外観が見えるようになりました。
隣接する高層マンションの影響で発生する強風、また防火や避難の観点から内部の生活を守ることを
目的として、建物形状や外観のデザインを決めています。
都内の高密化した住宅エリアでは、建物自体の断熱性能や防火性能を高めることだけに注意がいきがちですが、
人が暮らす環境面において、「快適性と安全性」を求める心理的なことに注意を向けてみると、
建物の外観デザインの工夫で防げることも数多くあるように思います。
建物の両側に厚い袖壁を出して、風の当たり方をコントロールしたり、隣家から出たの火のまわり方を遅くしたり、
広い空地のある方向に大きなバルコニーを設置して避難しやすい場所をつくったり、
人目のつきにくい部分の窓を小さくしたりといろいろ工夫しました。
住宅の設計では、間取りや外観はコンセプトシュミレーションの結果であり、
その家での暮らし方というソフト面をどう考えるかが大きなテーマになってきます。
今回の家づくりでは防風、防災、防犯、避難という都内では避けられない課題を考慮しながら
「安全性」という心理的コンセプトに則した住宅になりました。
このようなデザインアプローチはこれから当社でも増えてくるのではないかと思います。
これより内装工事が始まります。インテリアデザインの仕上がりも今から楽しみです!
工事の様子はまたレポートしたいと思います。
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東松山の3世帯住宅に、ハンドメイドのダイニングテーブルが設置されました!
この家は家族が7人、近くにお住まいのご兄弟が遊びにくることもあり、大きなテーブルが必要です。
大家族の家のリビングってどのようなものがよいのでしょうか。
想像してみると、みんながソファでテレビを見ながらくつろぐ。。というのは大家族には向かない風景かもしれません。
昔からある日本の家には、大きなちゃぶ台やテーブルを囲んで、そこで宿題をするお子さんがいたり、新聞を読むお父さん、
テレビを見ながら編み物をするお母さん、遅く帰ってきたご主人が晩酌をしていたり、
テーブルを使いながら自分のしたいことをしている風景があったように思います。さざえさんの家みたいなそんな風景。。
昔はそうでも今は。。ということもあるかもしれませんが、
大家族で一緒に住むときの利便性というのは、昔もいまもそんなに変わらないことなのかもしれません。
自分の場所は個室があり、みんなで過ごす場所には大きなテーブル。それはテーブルそのものが、
リビングの役割を果たすことに等しい。設計中の打ち合わせでそんなお話をしたのを覚えています。
はて、そんなテーブルってあるんでしょうか?
長さ3m、奥行90センチ、高さは65センチ、もちろん、そのような寸法のテーブルはお店には売っていませんし、
家具でオーダーをすれば恐らく40〜50万円はかかってしまいます。
それならいっそハンドメイドでつくってしまいましょう。ないモノはつくるしかない!
材木屋から直接板を買って、鉄の脚を寸法指定で注文し、それを現場で取り付けて完成。
塗装はお客様ご自身(セルフ)でやっていただきました。
かかった金額はおよそ15万円!破格の安さでつくることができました!
ニレの幅はぎ板のダイニングテーブル、いい感じに仕上がりました。こんなことも思いつけばできちゃいます(笑)
家族の集まる「大きなリビングテーブル」ができました。
工務店の現場監督(栗原さん)も応援に駆けつけてくれました。
お父さんにはホームセンターでビスを買ってきてもらい、脚をみんなで固定します。
お子さんも見ていて楽しそう。イベント感覚でよい思い出になってくれたらうれしいです。
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東松山市で完成見学会を行います。
日程:平成31年2月24日(日)13:00〜18:00
場所:埼玉県東松山市
※事前申し込み:当アトリエのホームページ(お問い合わせフォーム)よりお申し込みください。
見学希望、お名前、メールアドレスをお知らせください。
個人住宅のため、住所の表記は控えさせていただいております。
お申し込みいただいた方には、メールにて詳細をご案内させていただきます。
※設計者コメント
1つの家に3家族で暮らす多世帯同居の家です。
多世帯で暮らすことの難しさや課題に取り組み、将来の生活へのシナリオを描いて設計した住宅です。
2世帯住宅、多世帯住宅をご検討の方にとって大変役立つ事例となります。
お申し込み、お待ちしております!
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現場の帰りに少し遠回りして町を散策。。
町工場の多い大田区は、個人商店も多く、人情味があってとても好きだ。
大田区は昔からものづくりが盛んなエリア。一般の人にはほとんど知られていないけれど、
その業界では超一流!というものがたくさんある。
精密機械の中身のように、部品ひとつひとつのこだわりが、文明の礎を築いているといっても過言ではない。
もう「下町ロケット」そのまんまです。
町工場の多くは住宅街にあります。
道を歩いていたらいきなりこんなものを見つけました。
巨大な鉄アーレイではありません(笑)
そう、これは電車の車輪!ここはつくっている町工場なんですね!
おーこれはスゴいなぁ!思わず心の中で雄叫びをあげてしまいました。
もう、プロジェクトXの音楽が脳内に響いています(笑)
何だか小学生のころにもどったようなそんな気持ち。
当時の私にとっては、自由研究の題材なんかにうってつけ。
工場の人に車輪のウンチク、是非インタビューしてみたいものです。
この町にはこのようなものがまだまだありそうな感じがします。
帰りの寄り道が楽しみになりました。
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北本の2世帯住宅は外壁工事がほぼ完了。
今回選定した材料は、ワインレッド色の窯業サイディング。
2階の窓には水平に伸びるボーダー庇と、古材風のサイディングを組み合わせて、
外壁のコーナーを製作出窓のようなデザインに見せています。
ワインレッド色の外壁は、なかなか事例も少なく、お施主さんもはじめはどうなるんだろう、と
心配されていたようですが、出来上がってきた外壁をご覧になりとても気に入っていただきました。
板金のブラックや古材風のグレーとの相性もかなり良く、外観がぐっと引き締まって見えます。
特殊な材料は使わなくても、コラージュの仕方で立面の印象はかなり変わるんですね。
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東松山の3世帯住宅は外部の施工が完了し、足場が解体されはじめました。
足場がはずれると、建物の全体像がよくわかります。
今回の住宅は自身の仕事としては珍しく、黒一色の外観です。
黒は存在感が強く、重い色であることから、建物は実際よりも大きく見えてしまいます。
大きく見えすぎない工夫として、形を分割して見せたり、面を分散させるという手法があります。
そのようなデザイン操作を行うことで、人の目の錯覚を抑えることができます。
色で分けることをしないかわりに「構成パーツの大きさ」が重要なポイント。
大きなパーツと小さなパーツを組み合わせたり、凹凸や陰影をつけることで
大きさに対する感覚はだいぶ変わってきます。
屋根やバルコニーも構成パーツのひとつとして考え、
外壁に凹凸面をつくり陰影を出します。
バルコニーは長方形、屋根は三角形、窓は正方形、さまざまな形の組み合わせも
ボリューム分割には効果的な手法です。
外壁にとりつく窓や排気口の配列にも注意を払い、
大きく見える壁面を細かく分散させる効果を狙っています。
それにしても単一素材でつくるインパクトもなかなかよいです。
今日は天気もよく、黒の外壁が青空によく映えて見えました。
ひとつまたデザインの幅が広がりました。
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あれから1週間が経過し、今日の術後検査では何も問題なく、順調に回復しているとのこと。いや〜本当によかった。
以前のようなクリアな視界が戻ってきて内心ほっとしています。
3年ほど前から白内障になり、昨年には右目の視力がぼぼなくなってしまいました。
仕事や日常生活にも支障があることから早めの手術を希望していましたが、町のクリニックでは対応できず、
地元の総合病院にて検査したところ、かなり特殊な症例で、当院での手術は難しい。と言われてしまいました。え?聞いたときはかなりショックで、回復への道が絶たれたような気分でした。
難易度の高いこのテの手術ができる先生はそう多くはないとのことで、都内にある専門医療機関のN先生を紹介していただき
手術をしてもらえることになりました。まさにヒーロー出現です(笑)
白内障手術は通常2〜3ヶ月待つことが当たり前ですが、私の場合は特殊な症例ということもあり、
すぐに日程を組んでもらえました。年末での検査時に、手術は年明け4日でいかがですか?と聞かれてびっくり!
え、えっと、4日って1月の4日のコトですよね。さすがにセンセイも家族に怒られるんじゃ。。
でも、こちらに負担をかけないようにそう言ってくれているのかもしれないし。。
正直、早すぎて心の準備が(苦笑)。新年会の予定もあるし、前の日もたぶん呑んでるし。。
頭の中で言い訳を考えながら、おそるおそるもうひとつ候補日を伺ってみることにした。
N先生は少し考えてから、うーん、では15日はどう?とおっしゃる。
次もまた早い!嬉しい反面少し心配にもなってきます。
何はともあれ、この15日の提案は断らないのが正解!二つ返事でお願いすることにしました。
手術のやり方や、術後のケアなども丁寧に説明をしてもらえたのでひと安心。
手術前後の3日間は入院し、15日に予定通り手術が行われました。
車イスに乗らされて、まるで病人(笑)手術室の前には、これから手術を受ける人の列ができています。
みんな70〜80代の方々。40代でこの列に並ぶのは少し凹むがそれは言っても仕方がない。
手術予定時間は30分、車イスの列がだんだん少なくなり緊張してきます。
30分後には無事に手術が終わっているのだから、少しの間辛抱。。と自分に言い聞かせました。
いよいよ私の番がきました。中に入ると手術室の中は案外広い。先生と助手の人もあわせて7〜8人はいるだろうか。
手馴れた手順で、手術台に座らされる。麻酔は目だけなのでもちろん意識はある。
顔をシートで覆われ、手術をする目の部分だけが露出する。もともと目が見えないのでまわりの景色は正直よくわからない。
目に水のような液体麻酔がかけられ、うっすら遠くに光のようなものが見える。
手術が進むにつれて、光が近くなったり遠くなったり赤くなったり青くなったり、
なにやら見たことのない不思議な光景だ。おそらくレーザー治療をしているのだろう。
そのうち光がだんだん遠くに消え、はい、手術終了!
感想としては手術中にメスが見えるとか、そんなことは全くないし、痛さも何も感じない。
プラネタリウムで少しの間、不思議な映像を見ていたような、そんな感じに近かった。
手術直後は少し腫れたり、当日は少し痛かったりするという話も聞いていたけれど、
何事もなく過ごすことができました。先生の腕がきっと良かったのだろうと思います。ただ手術の緊張感と安堵のせいか、気持ちは少し凹みます(笑)
日帰り手術も多いようですが、凹んだメンタルの回復も含めてやはり1泊することがおすすめです。
白内障とは、目の水晶体の表面が白く濁ることにより視界を妨げてしまう症状。
手術では白く濁った部分を取り除き、眼内レンズを代わりに埋め込む。
眼内レンズは大きく分けて2種類あり、単焦点レンズと多焦点レンズに分かれる。
一般的には単焦点レンズが多く、遠くに焦点があっているので、近くはややぼやけるがメガネをかければ問題はない。
色や像も歪み無くはっきりと見えるので、正しく色を見たい人や細かい作業をする人には単焦点レンズがよさそうだ。
一方の多焦点レンズは、遠くと近くの両方に焦点が合うようにできている。
一見よさそうではあるが遠近2カ所の焦点があるため、像が重なる部分、つまり中間部分がどうしてもボヤけてしまう。
メガネをかけずに日常生活を送ることができるなどメリットもあるが、色は現物とは多少違って見えるという。
私の場合、仕事優先で考えると多焦点レンズは向いていないように感じた。
眼内レンズは半永久的に耐力があるので、一度つけたものを将来交換することはほとんどないらしい。将来左目も手術するときに右目と同じレンズにすればよいだろう。
翌日に眼帯がとれたときには、まるで世界が違っているように感じ、それはもう感動モノでした。
医療技術の進歩って本当にスゴいですね。そしてN先生に感謝です!
ここ数年の私の目の問題はようやく解決したようです。
将来、左目で同じようなことがあったときや、家族や友人にも今回の私の経験を参考にしてもらえるかもしれません。
N先生、これからもまだまだ現役でがんばってくれるとうれしいです。将来、左目のときもよろしくお願いします!
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大田区の2世帯住宅は外部まわりの仕上げ工事が進行中です。
写真は外壁材(サイディング)と軒天材(木調化粧パネル)の施工風景。
バルコニーや屋根の軒天には木調のパネルを貼っています。
これは本物の木ではなく、セメントパネルに木の模様をプリントしたもの。
防火規制の厳しいエリアでは、外部に使用できる材料は不燃性のあるものに限られてきます。
法律で決められた仕様にあわせて、適切な材料選定が必要になります。
これは正面の外壁に使用したサイディングパネルです。
まるでコンクリート打ち放しのような表情でとても重厚感があります。
今回の住宅は外部の仕上げに3種類の材料を選び、それぞれにテーマを設定しています。
「金属、コンクリート、木」それぞれの素材のイメージをサイディングで表現することを考えてみました。
木などは防火エリアで使うことは難しいですし、コンクリートを使うにはコストがかかりすぎてしまいます。
そこで防火性能の高いサイディングを使いながら木やコンクリートのもつ表情や、軽さ、重さ、硬さ、柔らかさなどのイメージがちゃんと表現されているものを探してみました。
本物なければ表現できない、ということではなく、むしろ本物のように見えることを逆手にとってみてはどうだろうか。
サイディングなのに、サイディングには見えない外壁。
セメント板なのに本物の木のように見える軒天。
金属なのに冷たさを感じさせない色彩。
どんな素材も使い方次第。
例えるなら、料理人の感覚に近いかもしれません。
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コーヒータイムの読書。最近忙かったのでほとんどできていなかったのですが、
また再開することにしました。
北欧の歴史について書かれた本、物語フィンランドの歴史を読んでいます。
歴史について書かれているのに、「物語」であるというこの本のタイトルが気に入りました。
なるほど、歴史とは壮大な物語を読むことに似ています。
北欧は、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランドの5カ国で構成されています。
よくSCANDINAVIA(スカンジナビア)といわれることがありますが、現地ではNORDIC(ノルディック)と表現されます。
フィンランドはもともとスウェーデンの一部であり、ソ連に統治されていた時代もあります。
フィンランドという国が誕生したのは20世紀に入ってからで、ヨーロッパの他の国々がそうであるように、
フィンランドも隣国との争いの中で独立を果たしました。
2017年には独立100年を迎え、国としての歴史はまだ浅いですが、そのルーツはとても興味深いです。
日本では、華やかなインテリア、充実した福祉、人を中心に据えた教育、IT先進国、フィンランドについて
とかくよいイメージをもつことが多いですが、戦争による侵略や、北極も近く、厳しい自然環境の中での暮らし
そこから生まれた独特な自然信仰や思想、それらがフィンランド人の特性や国の成り立ちに大きな影響を与えています。
著者の石野裕子さんには、私が所属する北欧建築・デザイン協会でもレクチャーをしていただいたことがあります。
石野さんは民俗学がご専門で、フィンランドとの縁はほんの偶然だったといいます。
ご自身では北欧のインテリアが特別好きとか、ムーミンもそんなにかわいいと思ったことがない、
フィンランドについて研究をはじめておきながらそんな自分を軽く呪ったこともあると(笑)
個人的な偏った感情がなかった分、ニュートラルにフィンランドを捉えることができた。
そうおっしゃっていたのを思い出します。はじめから北欧が好きということになぜかしっくりこない。
その感覚は言われて腑に落ちるような気がします。気がつけば関わるようになっていた。
フィンランドの魅力ってそのようなものかもしれません。
歴史の本はとかくカタい文章になりがちですが、この本では石野さんの観点からとてもわかりやすく書かれてす。
フィンランドの歴史について知りたい方、おすすめの一冊です。
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大田区の2世帯住宅、年明け最初の現場は外壁工事から。
ガルバリウム鋼鈑のサイディング張り。ライムグリーンの外壁です。
通常サイディングは3mモノが流通していますが、ガルバリウムのサイディングは
サイズを指定すれば、8mくらいまで継ぎ目なしで張ることができます。
今回、道路から見えるメインの外壁面は、長さ7mのサイディング一枚張りとしています。
この材料は非常に軽いので職人さんが手運びでも施工が十分可能です。
長さにあわせて現場加工も容易ですが設計時に搬入経路や施工場所の確保もしっかり考えておかなくてはなりません。
できるだけ施工に無理がないように、それも設計の仕事です。
外壁に沿って各面に足場が設置されています。
外壁、屋根、照明、換気扇など、すべて工事が完了したらこの足場は解体されます。
現在張ってある白いシートは透湿防水シート。
これにより建物の構造体を湿気から保護します
建物の湿気は外に出し、外の水分は中に入れません。
例えるならゴアテックスのような原理です。
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昨年から予定していた目の手術のため、都内の病院で過ごしています。
プライベートな内容で恐縮ですが、どうかご容赦ください。
40代の半ばで右目が白内障になりました。右目の視力はほぼなくなってしまい、片目での生活を余儀なくされました。
白内障といえば60代、70代の方がなるものと思っていたし、お医者さんからも40代での白内障は珍しいとのこと。
目をよく使う仕事で、いろいろ支障もあることから早く手術がしたかった。
手術前は少し緊張もしましたが、例えるならはじめてジェットコースターに乗る時のような、
不安とワクワクが入り混じる、そんな感覚に近いです(笑)
ようやく念願が叶い、今日無事に手術を終えることができました。
明日にはクリアな視界で景色を眺めることができると思うと嬉しくなります。
私のベッドから見える景色。大きな窓に面していて、都内の景色が一望できます。
夜に消灯すると、夜景がとてもキレイです。この景色が見られることで、気持ちの上で
いくらかラクな感じがしますが、病室ってやっぱり居心地のよいところではありませんね(笑)
さて、明日はもう退院です。味の薄い病院食やパックの牛乳ともようやくおさらば。
明日の日の出が待ち遠しい。
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仕事にしろ、人間関係にしろ、経験は大切な財産である。
経験が深いほどに、物事に対する理解や洞察力、判断するための一定の基準を持つことができる。
経験は人を成長させ、人生をより豊かなものにしてくれる。
まだ経験がない人や、または希薄であることが必ずしも経験がある人よりも
決して劣っているわではない。若いうちは誰だって経験は少ないものだ。
未経験であるからこそ想像力を働かせる。余計な知識にとらわれず
シンプルに物事を捉え、それが正しい判断への道標となる。
仕事でもさまざまな職人や熟練工と出会う。
自分も若いころとは違い、それなりに経験を積んできた。
お互いの経験値をもとに物事をすすめれば、大概のことは間違いなく進む。
しかし経験があるからといってそれにあぐらをかいてしまうと
思わぬ落とし穴にはまる危険にも注意をしなければならない。
経験は自分の行動に自信を与えるが、成長過程をすぎると
新しいことに挑戦しようとはせず、過去の経験に固執してしまうこともある。
人の話が耳に入りにくくなり、自分を狭い殻の中へと押し込んでしまう。
職人の高齢化により、最近そのことを感じる機会が多い。
もちろん高齢化だけの問題ではないし、これはひとつの例え話にすぎない。
経験のある熟練工は、それだけで尊敬に値する。
経験にあぐらをかくことなく、生涯学びを追求する職人さんもいる。
現場の先輩方から私は多くのことを学ばせてもらった。
生涯学びの心を忘れずに、私もそうでありたいと思う。
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東松山の3世帯住宅の2階リビング。
大工工事はほぼ終わり、これから仕上げの工程へと入ります。
今日はお施主さんと仕上げ前の現場を見学し、購入予定の家具の置き場所や
収納の広さなどを確認してきました。
壁や天井の仕上げの色、光の入り方など、完成イメージの共有もできました。
この家には2.5階の立体空間があり、半分下は収納、半分上は寝室になっています。
まるでアスレチックにあるDENのようなスペース。一緒に来られたお子さんも
さっそく階段を上がったり降りたり。。(笑)喜んでいただけたみたいです。
2.5階のDENから見下ろすとこんな感じ。ここには大きなダイニングテーブルを
置く予定。限られた空間ですが、半階上がりの空間構成にしたことで、
動線の楽しさ、空間の広さを最大限活かすことができたように思います。
これはかなりうまくいったみたい。
玄関ホールに階段が取り付きました。
ホールの突き当たりに大きな窓を設け、階段ごしに視線がまっすぐ抜けるようにしています。
閉鎖的にならず明るく開放的な空間となりました。
階段の両脇にはそれぞれの家族の部屋があり、このホールは3世帯の共有スペースになっています。
床はコンクリート仕上げとし、昔の土間玄関のようなイメージ。
そんな遊び心のあるお施主さんと、あっと驚くような仕上げを画策中(笑)
はたしてどんな空間になるのでしょうか。完成を乞うご期待です!
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上りやすい階段、年齢を重ねても上ることができる階段、上りたくなるような階段、いろいろあります。
それらの階段には手摺が必要で、上下の動線をつなぐ大切な役割です。
手摺がまるで公共施設や介護施設にあるのような、無骨でおおげさなものにならないように、
ただの身体を支える道具としてではなく、空間に溶け込みながらも使いやすい手摺を考えたいものです。
当事務所で手がけた手摺デザインの一部をご紹介します。
吹き抜けに面するリビング階段。
スチールの支柱の上に木の手摺を取り付けました。
握りやすく、しっかりつかまれる手摺。
リビングから見ても 圧迫感のないデザインです。
丸い木の手摺。2世帯住宅用の手摺です。
ご両親のために、握力が低下する可能性に配慮して握りやすい丸棒を選択しました。
壁に取り付く座金は、できるだけ目立たないよう壁内に隠しています。金物は特注品です。
ゴツゴツした金物は消し、丸棒にしっかり意識がいくようにしています。
玄関ホールと一体の木製井桁階段。
手摺は木材で大工さんによる製作です。
お施主さんの希望から廊下側の手摺はなし!(まじですか!)
そのかわり、壁側には体重をしっかり預けられるような木製手摺を提案しました。
ホワイトカラーのスチール階段の事例
窓から入る光を階段ごしに1階まで取り入れるのがコンセプトです。
手摺は両側に設置し、まるで網の面で囲まれるようなイメージです。
光の入り方を邪魔をしないように、手摺は極力細くデザインしました。
不思議と心理的な安心感が生まれます。
狭小住宅では1階玄関に光を入れることが難しいことが多く、
階段上から光を取り入れると玄関ホールが明るくなります。
玄関は顔であり、内部を広く見せる効果もあるため、階段のデザインには特に気を使います。
手摺は握りやすい太さとし、階段なりに連続して設置しました。
身体の動きに追従するように、廻り部分にも手摺が連続しています。
天窓の光が階段スペースを通して1階まで届きます。
この家は60代ご夫婦の終の棲家です。
ご夫妻の要望から、このようなモダンな階段になりました。(人によってはNG!)
手摺はステンレスを使用、まるでドアノブのようにプロダクトとしても美しい手摺。
「安全だけを考えた施設みたいな手摺にはしないでほしい。」
という施主さんからのリクエスト。
必要な機能は失わず、施主さんの感性に沿った手摺となりました。
階段の手摺は主に安全の面で注目されることが多いですが、
安全性やバリアフリーとは必ずしも、おおげさな道具を取り付けることではないのかもしれません。
安全でありながら、決してそんな顔はしていないデザイン。自分の心の若さを保つデザイン。
身体の衰えにも対応できるデザイン、バリアフリーもいろいろかもしれません。
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1月7日(月)、今日から仕事はじめです。
私は5日からは事務所に出ておりましたが・・(笑)
「仕事はじめの準備」ですね。
さて、今年はどんな年になるのでしょうか。
今年は4月に年号が変わり、新しい時代の幕開けとなります。
いわゆる歴史的な転機を迎える年です。
来年にはオリンピックの開催が控え、消費税も上がります。
各方面でもめまぐるしく変化が加速する1年となりそうです。
今年の私のテーマは「待つ」です。
新時代の到来に向けて大きな意欲を示したいところですが、私は敢えて「待つ」ことにします。
立ち止って、振り返って、歩いてきた道を今一度確認することに目を向けたいと思います。
独立して14年目を迎え、公私ともにそんな時期に差し掛かってきたように感じます。
この先の人生をより充実したものとするために、今「待つ」ことに取り組んでみようと思います。
新しい時代を「待つ」こと。新しい時代の価値観を「待つ」こと。
変化を「待つ」こと。そして変わらないものを同時に「待つ」こと。
映画「ターミナル」のトム・ハンクスのように(笑)
新しい時代を迎えるための準備をする年。
そんな心構えで、この1年に臨みたいと思います。
本年もよろしくお願いします。
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もう何十回も観たけれど、不思議とまた観てしまう。私にとってこの作品は特別なものだ。
作品内容についてここで詳しく書くことはしないが、この作品は映画で広く知られており、原作本においては全7巻で構成されている。
映画は原作2巻までの内容で完結しており、原作ではまだその先の物語が続いている。
ナウシカが私にとって特別であることについていえば、この作品全体を通して描かれている「共生」の世界観が
私の心に深く残っているからである。この作品で描かれた宮崎駿の「共生」はとても困難で矛盾に満ちたものだ。
その矛盾に向き合うことこそが、「共に生きること」を描くためにどうしても必要だったと宮崎駿は言っている。
映画を観た多くの人は、ナウシカという少女のひたむきな姿に、自然と人間の共存について純粋な心と
人としての倫理観のようなものを重ねて観ることだろう。
しかし、宮崎駿が本当に描きたかったものは、当時の映画の中ですべて表現することは難しかったようだ。
宮崎駿の描く「共生」とは単純な倫理観とは一線を画している。
原作本を読むと映画とは異なるナウシカ自身の苦悩が詳細に描かれていることがわかる。
原作ではナウシカは腐海についての研究を深めていく。はじめは腐海の毒から人間を守り、
腐海の毒による村人の病を治療することが目的であったが、腐海のついて知ることは、つまりは人間そのものを知ることであることに気づきはじめる。
人間が汚した自然。腐海は人間の世界の写鏡であり、それをもとに戻すことは、人間の存在を否定してしまうという結論に至る。
「自然」とは人間がコントロールできる範囲の世界。それが人間にとって「自然」の本当の姿なのだ。
驚いたのは人間には腐海の毒は必要なものであり、その毒がなければ人はもはや生きていくことができないという逆説である。
人間にとって本当の毒は人間のもつエゴであり、つまりは人間の敵は人間なのだ。
生きる世界が異なるもの同士。見方によって善や悪への考えは全く異なる。敵と味方は立つ位置が違えば結果は180度変わる。
共に生きること、その不可能な問にナウシカは苦悩する。碧き清浄の地は「人の創り出した幻想」であり、
その幻想は人間の身勝手さの象徴であるという現実。その現実に向き合い、それでも共存の道を切り拓くことこそが
宮崎駿の表現したかった「共生」への思いなのだ。
他にも宮崎駿の作品の中にはこの「共生」の思想が深く関わっている。
ナウシカという作品に出会ったことで、私自身もそのことを理解するようになった。
自分の生き方という根源的な問い、日常生活の些細なこと、仕事への考え方にも当てはまることはたくさんある。
人生とは他者との自分の共生の歴史でもあるとも言える。
「他者」を理解しようとする意識。その意識からはじまる世界のありかたを想像する。
自分たちが生きるこの世界の中で、考えるための苗を、ナウシカから分けてもらったような気がしている。
それが徐々に根を張り、自分にとっての「共生」の思想を育てていけたらと思う。
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2019年、東京都写真美術館で開催されているマイケル・ケンナの写真展に行ってきました。
20年前、書店で彼の写真集に出会って以来、すっかりファンとなりました。
今回の個展は45年の写真家としてのキャリアとしてほぼ集大成といえる内容。
年はじめに、どうしても見ておきたかった展覧会です。
彼の写真はいわゆる風景画のようなものとは違い、自然の中にある人の痕跡、
時間の記憶のようなものがどの写真にも同居しています。
それは見る人の遠い記憶を呼び覚まし、かつて見たことのある「心象風景」へと導きます。
現代社会に何某かを示唆するものでありながら、美しい風景としてのバランスも見事です。
詩的でありながらリアルな描写。見えるものと見えないものの境界。
この写真を見ていると、「原風景への誘惑」とでもいうような、そんな言葉が浮かんできます。
私にとってこの写真に出会ったころの「かつての自分」とも対話をしたような。。
そんな貴重な時間にもなりました。
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今日で2018年も終わります。
来年は「平成」も終わり、新しい年号で新時代の幕開けとなります。
2019年は独立して14年目。思えば前だけを向いてひたすらに走ってきた13年でした。
2018年は今までの自分を客観的に振り返るターニングポイントの年になったような気がします。
今年も新しい住まいをお引き渡すことができました。
ここ数年は、2世帯、3世帯住宅のご依頼が多く、設計ノウハウもかなり蓄積されました。
通常の住宅設計に比べて時間がかかるものですが、ご家族のみなさんとの打ち合わせを振り返ってみると、
本当によい時間をご一緒させていただいたように思います。
まるでお施主さんと世界を一緒に旅したような、そんな感覚に似ています。
親と子が一緒に住む環境をつくる、それだけで大変やりがいのある仕事です。
いつもリアルに思うことは、再び親と子が一緒に住むことは実は思っているほどそう簡単なことではないということです。
親子と言えども別々の人間であり、家族も独立した個人の集合体です。
一緒に住むけれども一緒には住みたくない。。こんな矛盾するような話もザラにあります。
登場人物の多さ、世代による考え方の違い、それぞれの生活時間帯や生活習慣などに考えを及ばせていくと、
こんなに難しい家づくりは他にないだろうとさえ思います。
再び家を建てることがきっかけに、お互いに新たな親子関係を築いていく。そのほうが正しい解釈なのかもしれません。
安易に「間取り」をつくってしまうと計画段階でその複雑さに気づけず、根本的な失敗につながります。
同居を成功させるためには、まず間取りではなく「環境づくり」にしっかりとしたコンサルティングが必要なのです。
この複雑な関係にどのような形で「調和」を生み出していけるのか。
2世帯、3世帯住宅を通して設計の原点はやはりこの1点にしかないように思います。
さて、来年は春までに3件の2世帯住宅が竣工を迎える予定です。
このブログ上でも更新情報を随時お伝えしていきたいと思います。
プライベートでは、娘が小学校に入学します。これからも多くのことを学び、成長していくことでしょう。
親として娘にできることは、突き詰めればそう多くはないかもしれませんが、
今できる親子の関係、成長過程の「環境づくり」に最大限の努力を尽くしていきたいと思います。
仕事とプライベートは私にとって、きっと同じことを考えていくことなのかもしれません。
そんなことを思う、年の瀬です。
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2階子世帯のリビングです。
この空間は壁、天井ともに、光の質感と陰影を美しく見せられるように塗装で仕上げています。
グレーを基調にしたオリジナル色。マットな質感で、天候により色の表情も変化します。
やはりビニールクロスとは一味違う感じです。
正面は当方でデザインしたオーディオシェルフです。面材はチェリーの板目を採用しました。
下の引き戸が両方にスライドするようになっていて、1枚の板から2枚の扉をつくることで
中心に閉じると扉の板の目がきちんとそろうようになっています。
空中に浮いたようにしたのは、家具に「重さ」を感じさせないこと、床面が家具の下まで伸びることで
空間が広く見えること、家具として自立して見えること、このようなことを考えて設計しました。
照明はすべて間接照明とすることで、夜の光が柔らかく、照明器具が主張しないように配慮しました。
ペンダントライトやスタンド照明を配置すれば、夜は素敵な光の演出になることでしょう。
廊下に据付たれたブックシェルフ。
この空間は廊下ではなく、「ライブラリーのような空間」がテーマです。
ダークグレーのフレームに背面にブルーの板を仕込んだデザイン。
趣味の洋書や写真集を入れるためにつくっていますが、本で埋め尽くすのではなく、
ところどころのマスを空けることで、小さなギャラリー展示スペースのような使い方ができます。
正面のリビングの入口のドアは、ギャラリーカフェの入口のような設えとし、単なる動線としてではなく、
物語性を込めた空間として仕上げています。
廊下と一体になったベッドルーム。または寝室とつながるギャラリースペース。
「廊下も寝室の一部として使えたら、あるいは廊下の中にベッドがあるとか?」
お施主さんと設計時に、こんな発想で意見を交わしたのを覚えています。
そのイメージを形にしてみると、決めた部屋の名前はあまり重要でないことがわかってきます。
空間の使い方は住まいての自由にまかせるべきだと思います。
その自由への選択は、設計者の気配りでご用意して差し上げるべきことだと思います。
美しい設えとは本来そういうものではないかと思うのです。
引き戸で仕切れば、個室としても使用できます。
家具製作したオリジナルの洗面化粧台。
余計な収納扉はなくし、シンプルなデザインとしました。
下にカゴなどを納めるため、棚だけの収納です。
照明は昼白色と電球色の組み合わせたものでつくりました。
お化粧をするときは白い光、その他のシーンでは暖かな電球色を選定。
上部の鏡収納はサンワカンパニーのユニットで家具との相性もとてもよいです。
既製品とオーダーメイドとの組み合わせの好例です。
2階のレストルーム。
用を足すための場所でありながら、数分間、ひとり想像の旅に出る場所(笑)
そんな物語を描くとトイレも楽しい場所となりますね。
人生少し得した気分になるかも(笑)
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目白台の2世帯住宅ではキッチンをオーダーで製作しています。
こちらは1階の親世帯のキッチンお母様のご要望によりL型のキッチンとしました。
扉面材はグレー色を選択。引き出しの位置、取手のデザイン、シンク下はゴミ箱入れでオープンにするなど
自由な組み合わせはオーダーメイドならでは。
当方ではキッチン製作工場への直接発注を行うため、キッチンメーカーのものに比べて
断然価格がリーズナブル!このグレードのキッチンがこんな価格でできるの?とお客様の評判もよいです。
オーダーメイドはすべてが高い訳ではないんです。
現在進んでいる他の2世帯住宅でもこの方式でキッチンで製作中です。
こちらは2階の子世帯のキッチン、面材は「濃紺色」を選択。渋くてかっこいいですね。
カウンターはステンレスのバイブレーション加工と御影石の組み合わせ。
900幅のスクエアシンクはプロダクトとしてのデザイン製も高く、採用のリクエストも多いです。
お料理が好きな奥様にとって、このキッチンは相棒として活躍してくれそうです。
奥様からのリクエストは天然石の作業カウンター。
ラベンダーブルーの御影石を選定。天然石ならではの美しさと重量感。継ぎ目も目立たなくしてとてもよく仕上がりました。
背面の吊り収納は、引き戸のリクエストにお応えし、キッチンにあわせたオリジナルデザインの家具を製作しました。
一般論として、このような1点もののキッチンは青山あたりのキッチンブランドに頼んだら
おそらく高級外車が買えるような金額になりますが、当方からの工場直接発注の製作手法は、
ブランド料や中間マージンなどのの余計なコストをカットできるのでキッチンにこだわりたい方にとっては
とてもおすすめの方法です。ハウスメーカーでは対応できない設計事務所ならではの提案です。
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目白台の家(1階リビング)中庭を囲むプランです。
キッチン、ダイニング、リビングを光の入る中庭に沿って配置しました。
リビングの天井高さは2.6M、天井面いっぱいまで窓にしました。
中庭の外壁面は白く塗っています。こうすることで外壁面に反射した光を室内にも取り込むことができます。
庭とのつながりが、空間をより広く見せる演出をしています。
中庭の工事は年明けから始まります。
柔らかな間接照明の光
廊下は車椅子が通れる幅に広く設計。バリアフリー対応としています。
フローリングは幅広のオーク。木の存在感は空間に落ち着きを出してくれます。
奥まった敷地であることから、設計時に1階に光を入れることを切望されたご両親。
大変難しい条件でしたが、光の入り方を工夫して、とても明るいリビングになりました。
時間によっては直射日光が入ってきます。
ご両親の寝室は畳床の和室です。天井には杉板を貼りました。
寝るときに見上げるのは天井です。寝る時間は人生の約3分の1と言われるほど。
天井に使う素材や照明計画には設計上の配慮は欠かせません。
障子のマスは大きく割付け。紙を活かすデザインです。
今回、障子の下棧は200ミリと大きくとっています。
これは布団が擦れることを考慮した高さにしています。
障子を両方に引き分ければ、中庭の景色を取り込むことができます。
中庭部分の外観。外周りはグリーン、中庭に面する部分をホワイトで塗り分けます。
単なる色分けのデザインにとどまることなく、目的に沿った色の使い方が大切。
大きな建物も、単一の色ではなく色分けをすることでボリュームを小さく見せる効果もあります。
ちょっとした外観のデザインテクニックです。
次項は、2階の写真へとつづきます。
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今日かかりつけの病院で手術の日が決まった。
僕が年寄りかと勘違いされそうだが、まだ46歳の若年性の白内障である。
手術日が決まって本当にうれしい。 正直、不安な気持ちがないわけではない。
それよりも 綺麗な視界がもどってくることのほうが何よりも楽しみだ。
はじめは気楽に考えていたのだが、若年性であることや特殊な事情も重なった難しい手術らしく、
町の眼科クリニックや総合病院では手に負えず、専門医療機関での手術となった。
このような記事を書くことは本当はあまりいいことではないのかもしれない。
でもあとで振り返ったときに、こんな年末もあったなぁ。と思い出すこともあるだろう。
記録としてここに記しておきたい。
前置きが長くなったが、目のこと以外でも今年は何かと医者にかかることの多い年だった。
親のことや自分のことも含めて、そういう年齢にもなってきたことも実感としてある。
ぼくは建築設計を専門で仕事をしているけれど、お医者さんはそれぞれ医療分野のプロフェッショナルだ。
いろいろ話しをしてみると分野は違えど、専門家として相手とのコミュニケーションが大切な仕事であることは、
僕らの仕事にも共通するところも多いような気がする。
正しい専門家とはどのような人のことか。自分が患者の立場になってみると客観的に見えてくる。
問題や条件を整理し、観察力に優れていること、患者の不安に思うことを取り除く努力をすること、
時には背中を押してあげること、正しい知識をもち、それに対して自分なりの意見をしっかり持っていること、
自分の思い込みや間違った知識を正せる柔軟性があること、教科書セオリーより個々のプロセスを大切にしてくれること、
治療の目的や意味をわかりやすく説明してくれること、患者の希望や置かれた立場への配慮を心がけること。
つまりはオーダーメイドに応える力を持っていること。病を通して、どう生きるかについて考える意味を与えてくれること。
あげればきりがないくらいにある。
いろいろあげてみるとふと気づく。これらの人には「医療とは何か、医師とは何か、」その問と思想に向き合い、
それぞれに自分なりの答えを持っている人であろう。
患者が「先生」と呼ぶその言葉の中には、こんな期待が無意識に込められている。
プロフェッショナルとは何か、自分もこのことを改めて考えるよい機会だったと思う。
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大田区の2世帯住宅の現場は構造体、屋根工事が完了し断熱工事が進んでいます。
今回、断熱材は高性能グラスウールを使用しています。
大田区では防火対策を強化によりこの住宅は木造2階建でありながら、準耐火構造という
45分耐火性能を有しています。
そのため外壁材や窓の耐火性能のほか、断熱材もグラスウールにほぼ限定されます。
隙間のないよう柱の間に詰めていきます。
16:30でもう外は真っ暗。現場も作業灯をつけて工事をします。
まもなく年末年始。職人さんたちも年末に向けてやり残しのないように気を配っています。
現場からの帰り道。
長い商店街を抜け、駅へと向かいます。
昨日まではクリスマスで盛り上がっていましたが、今日からは一気に年末モードです。
下町のこういう場所は落ち着きます。きっとお正月も出店なんかがたくさんあって、
お年玉をもらったこどもたちで賑わっているんでしょうね。
そんなことを思いながら、今日はちょっと寄り道して帰りましょうか。。
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今日はクリスマス・イブ。
事務所に戻ってちょっと一休み。年内まだまだやることはたくさんありますが、
サンタさんが来る前に・・そろそろ大掃除をはじめますか。
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目白台の2世帯住宅の工事はほぼ完了し、残すは外構工事のみとなりました。
足場の外れた正面外観。グリーン+ブルーの外壁に木製ルーバーの組み合わせです。
今日は、お引渡し前の内部の写真撮影。建築カメラマンの小林さんに来ていただきました。
今回は2回に分けて撮影を予定します。
この家には内部に中庭があり、春先になったらお庭もきっとよい感じになると
思います。そのころにまた撮影したいと思っています。
建て主さんへの写真のプレゼント。これは大変喜ばれます。
一番素敵なお姿を、記念に残したいと思います。
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職人だけではなく、電気屋さん、設備屋さん、建材メーカーの営業職などを含めれば
実に多くの人が現場に参加します。
設計者はその全体を見渡す司令塔のような役割で、
自ら設計した図面をもとに、実際に建物をつくる上で彼らと話をする機会も多いです。
職人とひとことで言っても、いろいろな専門分野に分かれます。
わかりやすいのはやはり大工さんで、木造であれば、ほぼすべての木工事を大工さんが担当します。
モルタルや土壁を塗るのは左官やさん、屋根を葺くのは板金屋さん、
ガラスを入れるのはサッシ屋さん、タイルはタイル屋さん、電気工事は電気屋さん
水道工事は設備屋さん、製作家具は家具屋さん、オーダー建具は建具屋さん、
お庭は植木屋さん、内装はクロス屋さん、ざっとあげただけでもすごい数ですね。
彼らの仕事の多くは、どれをとっても長く日本で築かれてきた建築技術の代表的なものばかり。
しかし、最近はハウスメーカーやローコスト住宅などの仕事で安く叩かれ、仕事の質は下がる一方、
若い人が育たない、技能を使う現場は希少、部品のような使われ方、過重労働の強要、彼らもいろいろ思うところがあるようです。
たまに欠陥住宅や手抜き工事のニュースを目にします。
本来あってはならないことですが、それらは職人の心が離れた結果として起こるのかもしれません。
目立たなくても、手を抜かず、家を建てるお客さんのために、自分の信条を持って仕事をすること、
それを「職人力」とでも言いましょうか。よい家をつくるためには欠かせない力であると私は思います。
現場で話をしていていつも思うのは、よい職人さんはコミュニケーション能力がとても高いです。
できる職人さんほど自分で試行錯誤し、自分の技術を役立てる術を知っています。
過去の経験に裏づけながらも、過去にとらわれない考える力を持っています。
家づくりに関わる人間として、「職人力」を大切にしていきたいと思います。
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住宅を建てると土地や建物に対して、税金が発生します。(oh my got!!)
二世帯住宅では、親子の同居という住居形式であることから、
税金についての優遇措置があります。
特に都心部や地価の評価額が高いエリアにおいては、
相続するとき高額な相続税がかかるため、この対応策として
小規模宅地の特例というものがあります。
せっかく二世帯住宅を建てても、高額な相続税がかかれば
その土地や建物を守っていくこといはできなくなってしまします。
そのための緩和措置として小規模宅地の特例を利用することを
おすすめします。
小規模宅地の特例とは、330?未満の宅地に対して適用される特例で
土地の所有者である相続人と、被相続人である家族が同居することで、
相続時ににかかる税の負担を大幅に軽減することができるというもの。
特例を受けるためにはさまざまの条件があり、設計する際は
この条件に沿って設計をしていく訳ですが、家族の方々の事情によって
お話をお伺いしながら適切なプランにする必要があります。
生活エリアが分かれる二世帯住宅では内部の行き来ができれば
税法上では「同居」とみなされますが、内部の行き来ができない完全分離の
二世帯住宅をつくってしまうと「同居」とはみなされません。
玄関、水回り、生活のすべてが別々であったとしても
内部の行き来ができるところを1箇所つくれば「同居」とみなされますので
特例を受ける場合はきちんととっておいたほうがよさそうですね。
建物の登記の仕方も重要です。
?1階と2階で親子別々に登記した場合は区分所有名義となります。
?1階と2階は1つの建物として登記した場合は親子の共有名義、または単独名義となります。
?の区分所有名義でいけば税法上の「同居」とはみなされませんので、
小規模宅地の特例を受けることでは不利になります。
?の共有名義(または単独名義)でいけば、税法上の「同居」となりますので
特例を受ける場合は有利となります。
登記の分け方については、相続税(国税)の場合と、固定資産税(地域税)では
緩和に対する考え方は逆で、固定資産税の減税を考えた場合は区分所有名義にしたほうが有利になります。
本当にややこしいですよね。
よって、相続税対策を重視すれば、共有名義に対応できる「同居型」となるようなプランニング、
固定資産税の減税を考えれば区分所有名義に対応できる「完全分離型」となるようなプランニング
が必要という訳です。
建築計画をすめていく上で、設計者ともよく相談してご家族にとって
何がよいのか、一緒に話しながら決めていくとよいと思います。
以上二世帯住宅の税金対策についてのコラムでした。
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埼玉県北本市で2世帯住宅の現場が進行中。
棟上げが無事に完了し、今日は構造体の耐震補強、金物設置の検査を行いました。
1、2階をあわせて約53坪の住宅です。
12月も中旬になり、そろそろ年の瀬が見えてきたこの時期の現場はやはり寒い!
職人さんや検査員、我々も含めて防寒着着用で検査に臨みます(笑)
これ、かなり暖かいんですよね。
2階は天井の高いプレイルーム&リビングルーム
ハイサイドライトやトップライトがあって、とても明るい空間になっています。
構造材の材種、金物の設置、耐力壁のつくり方。検査項目を見ていきます。
床に敷いてある白いボードは、2世帯住宅では必須ともいうべきもので、
強化石膏ボードを敷いています。
これで2階で歩く音が1階に伝わることをかなり防ぐことができるので
私たちの設計では、床の遮音対策はすべての住宅で行っています。
1階のリビングスペース、駐車場スペースを確保して建物の南側を空けたことで、
1階にもよく日が入り、明るい部屋になりそうです。
今から仕上げの色などを妄想中(笑)
さて、どんな色にしましょうか。
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目白台の2世帯住宅は12月中の完成に向けて、現在仕上げ工事の真っ只中。
外壁の仕上げ工事が進んでいます。
目白台の家は、外壁モルタル+吹付け塗装という当事務所ではよく使用する仕上げ方法です。
吹付け塗装はやはり自由な色(色をつくることもできる)で仕上げをすることができるほか、
光が柔らかく反射して、建物全体をやさしい雰囲気にしてくれます。
今回は外壁の面積が広いことから、多色使いで塗り分けてしてみました。
外周はグリーンとブルー、グレーを調合した特注色。中庭に面する部分の壁はホワイトグレーで調合しました。
中庭は壁に光を反射させて、室内に光を取り込んで明るくみせたい。
またインテリアの雰囲気と中庭が連続したときに、自然な感じに見えるように配慮しました。
屋根の庇は黒く塗り、強い日差しを避けるための帽子のような効果を狙っています。
色を選ぶのときは、単なる好みで選ぶのではなく、その色の効果をどのように考えるか、
ここが選定のポイントとなってきます。
グリーン+グレーの外壁は、周囲の街並みに調和しながら、他にはないような色彩。
お施主さんとじっくり検討して決めた色です。
今日現場を見て、とてもうまくいったように思います。
まもなく足場が解体されます。
全貌が明らかになるのが楽しみです!
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東松山の3世帯住宅の現場。
写真は前回ご紹介した中村大工と現場監督の栗原さん。
休憩時間にも関わらず、建築談義に花が咲きます(笑)はい、みんなマジメなんです。
そこに私も加わり、設計者と施工側での意見交換がはじまりました。
私が描いたキッチンまわりの造作図。
中村大工にこちらの設計意図を伝えます。こういうデザイン、こういう形につくりたい。
口で言うのと実際につくるのでは大違い。
こちらも制作を前提としたリアルな図面で挑みます。若いころは、制作できないような図面を描いて
職人さんからよく叱られたものです。(絵に描いたモチ。。)
私も長い経験を積み、いろいろな職人さんと出会ってきたことで
実際に制作できる図面、よりしっかりつくる方法、美しく納める方法を習得しました。
中村さんはさて、どう出るか。。
こういう意見を交わす時間は本当に楽しく貴重な時間です。
若い設計者は是非、現場に飛び込んで職人さんの言葉に耳を傾けてもらいたいと思います。
この場で出た大工さんの意見が、自分の設計の考えや知識の肉付けになっていくのです。
正解がないものに真摯に取る組む姿勢。相手に気持ちを伝えることも技術のうち。
なるほど、センセーそうしたいのか!それならこうしたらうまくできるよ!
職人さんのアイデア、これを引き出せたらもう完璧です(笑)
さすが中村大工、経験とアイデア豊富な方でした。
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大田区の2世帯住宅。約2日間で木構造を組み上げました。
総勢10名の大工衆が各部の担当を受け持ちます。
基礎のころはまだ平面で、骨組みが立ち上がると空間が立体的に見えてきます。
近くにお住まいの施主さんも駆けつけ、構造体と空間の大きさに驚かれていました。
平面と立体とでは、広さや大きさの感覚は全く違うんですね。
この家は上下階で分けられた完全分離型の2世帯住宅。
2階に上げってみると、日の入り方や見える景色、設計段階で思い描いていた部分が現実に見えてきます。
がらんとした骨組みだけの景色。完成したらもう見ることはできませんが、この時の現場は一番活気に満ちています。
納屋のような簡素さと、真新しい木材の香りが充満していて、清々しいものです。
構造材の選定は土台や柱はヒノキを使用。長期的な耐久性を考えての選択です。
2階のリビングから見える景色。天井が高く気持ちのよい場所になりそうです。
2階の骨組み状況の確認。カッコつけてますねぇ。
柱をナデナデしながら心の中はウキウキです。
でも検査の目はちゃんとキビしい(笑)
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目白台の2世帯住宅は工事もいよいよ最終段階。
内装のクロスや、塗装の色も決定しました。
今日は窓まわりのカーテンの選定のため、南青山のホームデコアに来ています。
インテリアコーディネートも私たちの大切な役目です。
インテリアは機能と感性のバランス。機能一辺倒ではつまらないですし、感性だけが先走りすぎれば、
落ち着きに欠けるインテリアとなってしまいます。
そのバランスを見極めること。調和させることへの深い関心。そこにセンスが生まれます。
ホームデコアは南青山にある輸入カーテンの専門店。
ヨーロッパのあらゆる地域のすばらしいカーテンやクロス、カーペットなどを日本に紹介しています。
日本にも素敵なものはたくさんありますが、やはり本場のものを超えるものはやはり少ないです。
代表の石田さんは、設計者の意図を汲み取り、またお客様の個別の感性にあわせたご提案をしてくれます。
その信頼から、ここにお連れすることにしています。
価格は高級路線もありますが、国内メーカーで仕立てるものとそう変わらない値段設定も多くあります。
そのような意味では、この値段でこのカーテンができるなんて!と喜んでいただけると思います。
インテリアコーディネートはプロである私たちが関わりますので、ご自身の希望が漠然としていたものであっても
そこからヒントを拾い出してご提案します。通常はインテリアコーディネート料金がかかるものですが、
私は設計業務の一部としてインテリアコーディネートを考えていますので、そこでお金をいただくことは
していません。(もちろん、紹介料なども一切いただきません。)
それよりもよい職人のお店をみなさんに知ってほしいと思っています。
そのきっかけも含んで、インテリアコーディネートと考えています。
今回も素敵なコーディネートをありがとうございます!
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大田区の2世帯住宅の現場。
基礎が綺麗に打ち上がり、床下設備の配管工事がはじまりました。
↑上の写真は銀色のダクトがクネクネと。。さてこれは何でしょう。
クイズではないので、、(笑)先に答えをお知らせしますと、これは第1種換気用のダクトなんです。
え?第1種換気ダクト??はい、そうですね、これを聞いてすぐわかる方は相当な換気マニアです(笑)
一般的に家の中というのは換気が必要なんです。
台所やトイレ、浴室などにはそれぞれ換気扇がついていますね。
それを局所換気といって、その部屋だけを換気するものなんです。
これを建築用語では第3種換気方式といいます。
それでは反対に、部分的な部屋だけではなくて、家全体を同時に換気できるものを第1種換気方式といいます。
窓は開けずに、家の中のすべての空気を換気させるための換気装置。
基本は大きな換気扇ですが、各部屋にダクトをまわして、空気を集めて排出します。
この方法のよいところは、冬でも外の寒い空気を中に入れることなく、ある程度温度調整された新鮮空気を
入れることができます。暖房したのに換気したらまた寒い!そういうことがなくなるワケです。
もうひとつの利点としては、春先の花粉対策。私もそうですが、花粉症の方は春先に窓を開けることはできません。
洗濯物を外に干すことすら難しい・・。
そこでこのような換気設備があれば、外部フィルターで花粉は除去できる上、窓を開けなくても新鮮空気が室内を満たすことができます。
これは現代ならでは、、の話かもしれません。
上の写真が換気本体です。点検できるように床下に設置します。
今の日本、特に都心部の住宅地において、外がかならずしも良い環境とは限りません。
光化学スモッグや、杉花粉、排気ガス、異常気象の影響など、いろんなことが言われています。
外の空気は新鮮でおいしい!というのは、一概には言えないのかもしれません。
外環境と向き合う方法として、このような換気設備も選択肢のひとつかな、思っています。
この換気設備はエアコンではありません。ですので機械の構造は非常に単純です。
ですが、最近の過剰な設備住宅はやはり長期的なものとして見た場合よいとは思えません。
設備もできるだけシンプルに、条件に沿って必要なものを注意深く選んでいくことが、大切ですね。
以上、換気のお話でした。~~
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目白台の2世帯住宅。大工工事もほぼ終わり、まもなく仕上げ工事に移行します。
大工さんのいなくなった現場は、がらんとしていて、束の間の静けさが現場に漂います。
この時間は結構好きで、ひとりで光の入り方などを見ながら、あれやこれや
仕上げられた感じをイメージしていきます。
これから塗装工事、クロス工事、家具工事などが入り、この先1ヶ月で現場は
見違えるように進みます。今日はその前に、色や素材をみなで再確認。
完成が楽しみです。
長い廊下はまるで路地のような感じに。
寝室は勾配天井にして窓はあえて小さくデザイン。
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東松山市で3世帯住宅が進行中です!
今回はじめて使用したガルバリウム鋼鈑のブラック。
普段は自然素材系の組み合わせが多いのですが、今回は素材の耐久性とメンテナンスコストのバランス、
また、グラフィックデザインのお仕事をされていたお父上のアドバイスもあり、
この仕上げにおさまりました。エッジが効いていて、うん、なかなかよいです!
ガルバリウムの外壁は施主さんの好みではっきりとわかりやすい素材。
ご年配の方で昔のトタンをイメージしてしまう方も多いですが、比較的若い方にはファンも多いです。
ガルバを売りにしている建築家もよく見かけますが、私は決してそうではありません。
適材適所、バランスを考慮して落ち着くもので決めています。
何より、施主さんにいいね!をいただくことが何より大事なこと。
3世帯住宅は建物も大きく、長期的なメンテナンスははずせない重要な課題。
ここはハウスメーカーさんは最も利益を得やすいところ。。メンテナンスを他人まかせにしないことが大切です。
一度でも他社で補修工事などを行えば、ハウスメーカーでは保証対象外。。今後30年、40年、同じメーカーにずっと高いメンテナンス料金を支払い続けなければ、保証を得る仕組みではありません。そもそもその保証とは、何を保証しているものなのか、
一度立ち止まって考えてみてください。
自分できちんと見積もりをとって、メンテナンスすることを考えれば、建物は十分に維持できます。
それは地場の工務店でももちろん可能なことです。ハウスメーカーより費用が2/3になった、なんて話は結構ザラにあります。
その費用を少しでも軽くできるよう、今回はガルバリウムという選択肢となりました。
今回は外壁ガルバリウム鋼鈑からの豆知識でした〜。
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東松山の3世帯住宅は大工工事が本格化!
担当していただいているのは大工の中村棟梁です。
中村さんは私とほぼ同世代の大工さん。一番働き盛りのバリバリの大工です(笑)
私たちのような注文住宅を多く手がけ、まあとにかく仕事が綺麗!!
大工は親方からの教育がそのまま弟子の技量や人となりに現れると思っています。
その中で中村さんはピカイチ!
この建物は60坪程度の大きさがあるので、本当なら大工2人で担当しますが、
中村さんはお一人でも十分のようです。
私が現場に行くといついも整理整頓、現場が綺麗です。
そして細かい造作、角面の処理もキレてます!キレキレです(笑)
私語は一切いたしません。余計なことは聞きません。
でも私が何をしたいのか、図面から正確に読み取ります。
そして黙々と現場を仕上げていきます。
昨日ゴルフに行ったことを現場監督から情報を得たので
休憩時間にゴルフの話を少々。。
いやぁ、昨日は調子悪くって。。照れくさそうにニコっと笑った中村さん。
また会いたくなる職人さんです。
こういう職人さんとの出会いも、この仕事の醍醐味ですね。
中村さん、次回までよろしく頼みます!
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新宿オペラシティにて、建築家の田根剛さんの展覧会が開催されています。
仕事で新宿に来たついでに。。ちょっと寄ってみた展覧会。
写真は田根氏の代表作であるリトアニア国立博物館の模型です。
田根さんの経歴などはここでは詳しく書きませんが、
この美術館は彼が26歳の時に、国際コンペティションで勝ち取ったもので、
リトアニアの大地にこの建築が実現しました。
戦時中ロシア統治の時代につくられた飛行場を博物館として
再利用するというものすごく大胆な構想です。
建築家として40代ならまだ若手、という評価が日本にはありますが、
26歳の若者にこの博物館を任せたリトアニア政府やコンペ審査員の決断もさることながら
彼の類まれなる才能がこの建築を実現へと導いたのでしょうか。
世の中には確かに天才が存在します。
天才という言葉片付けてしまうのは、、と言われそうですが、
それは天才を知らない方の言葉です。
圧倒的な才能、それが田根剛さんです。
彼はパリに活動の拠点を置き、日本の建築教育とは
一線を画しているようです。若干39歳、すごいなあ。。
歴史の読み込み、素材の選定、それの応用、空間の組み立て方
どれを見ても関心させられます。
もちろん、何かケチをつけることもできるかもしれません。
いろいろツッコミどころもあります。それでもスゴイ人が出てきたなあ!そう思いました。
今後の田根さんの活動も楽しみにしています。
もちろん、僕はイチファンとしてですが(笑)
オリンピックの新国立競技場コンペ案
東京に森(古墳)を出現させるというアイデア。旧スタジアムと歴史へのオマージュ
周辺環境への配慮。原初的かつ未来へとつなぐ時間のあり方を示されているようでした。
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目白台の2世帯住宅は中庭のある住宅です。
2階リビングから中庭に向かっての風景。外壁には防水シートが施工され、下地工事が進んでいます。
これは屋根に取り付く換気部材です。
屋根の先端に取り付け、屋根内に溜まった暖気を外部に排出するためのものです。
こういうものもメーカーがいろいろあって、一般的にはあまり知られていませんが、
私たちにとっては大変馴染みのあるのもので、防火対応の軒先換気部材です。
屋根の先端にこんな感じで取り付けられます。
現在は建物の構造体を雨や湿気から守るために、このような建築部品を多く採用します。
なるべく目立たないように、デザインもシンプルなものを選んでいます。
隠れた建築部品。話せばいろいろありますが、それはまたの機会に。
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久しぶりの休暇。神奈川県立近代美術館の葉山館で行われている
アルヴァ・アールト展にやってきました。
アルヴァ・アールトは北欧フィンランドを代表する建築家であり、プロダクトデザイナー。私が大好きな
建築家でもあります。私の所属している北欧建築・デザイン協会でも、この展覧会は話題になっていました。
今日は妻と娘と一緒に、電車に乗って、バスに乗って、ちょっとした旅行気分に。
日本では北欧デザインがブームですが、その原点のひとつにはこのアールトの存在は欠かせません。
日本にも造詣が深く、日本のデザインからも多くの影響を受けているのだとか。
日本がなくしてしまった大切なものが、北欧のデザインに形をかえて生きているようにも思えます。
何気なく連れてきた娘にも、何かが伝われば。。
そんな親心よりも、ぬいぐるみと遊ぶのに夢中な娘であります。。
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大田区の2世帯住宅の現場がスタートしました!
木造2階建ての完全分離の2世帯住宅です。
地盤調査の結果を踏まえ、今回は柱状セメント杭を地中に打ち込みます。
建物の荷重を地盤に伝えるための重要な工事。
予定本数のすべてを打ち終わり、これから基礎のレベルや正確な距離を測定します。
建物の位置は、赤い糸を張って正確な位置出しを行います。
隣地からの距離、建物の寸法、地盤レベル、対角線の距離などを測定。よし!間違いありません。
その後の基礎型枠の様子。鉄筋の太さ、設置間隔、各部の寸法、など要チェック!
すばらしく綺麗に配筋されています。こういう現場は検査してもうれしいもの。検査はもちろん合格です!
右は構造エンジニアの草間氏。一緒にチェックに立会います。
コンクリートの強度、工場からの発注書も確認しました。
あとは基礎を打つだけですね。よろしくお願いします!
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東松山の3世帯住宅。本日棟上げ完了しました!
朝から総勢7人の大工さんが集結し、一日でここまで組み上げました。
棟上げは何と言っても工事の一大イベントです。
お施主さんも時間をみながら現場に足を運んでくださいました。
作業終わりには、これから担当する大工の親方をご紹介。
お互いにご挨拶を終え、工務店社長が自らお祓い。
工事の安全をみんなでお祈りしました。これから木工事が本格化します。
現場も忙しくなりそうですね。
よくお客様から「上棟式」はどうすればよいでしょうか?とご質問を受けます。
ハウスメーカーや建売住宅の現場ではそのようなものはもうやらないことが多いようです。
でも私たちは、略式でもよいので、かならず棟上げ行事は行うようにしています。
職人さんの建て主さんが一同に揃い、ご挨拶を交わすことはやはり大切なことだと思うのです。
建て主さまからは心付け程度のお礼や、お酒とお弁当などお渡しすることもありますが、
昔と違い、宴会などを開くことはほとんどありません。
自分たちの家はこの方々がつくってくれる、また職人もこの人の家をつくっていく。
そういうことが大事です。
作業終わりの夕日を眺めながら、そんなことを改めて思いました。
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大田区の2世帯住宅。いよいよ着工準備に入ります。
本日は、着工前の大切な儀式。地鎮祭です。
あいにくの雨模様となりましたが、昔から雨降って、地固まる。。ということわざもあるように
地鎮祭はむしろ雨でしょう!というのは少々強がりか(笑)
ここで地鎮祭についてご説明。
地鎮祭とは古来から日本に伝わる天と地の儀式で、神主さんをお呼びして執り行います。
神式、仏式、またはキリスト教などいろいろありますが、
日本で一番多いのはこの神式。
目的は、工事前のお祓いの意味が大きく、ご近所に着工することを伝えるとともに、
工事の安全、順調に進むことを祈念する儀式です。
職人さんはこの儀式をとても重要に思っていて、地鎮祭を省いた現場では仕事はしないという方も多いです。
まわりへの配慮、物事へのけじめ、そういう意味も大きいようにも思います。
祭壇には海のものや山のもの。お水やお米。古来から記された供え物をおきます。
お塩やお酒など、儀式の途中で使うものもあります。
鍬入れの儀では、設計者である私はカマ入れを担当します。
その次にお施主さんがクワ、施工会社が鋤、砂山を崩して儀式を行います。
儀式自体は30分くらいですが、お施主さんにとっては一生に一度の儀式です。
終わるといつも身の引き締まる思いがします。
工事の安全をお祈りします。神主さんもありがとうございました。
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2年前に完成した軽井沢の家で、オープンハウスを開催させていただきました。
紅葉の美しいこの時期の軽井沢は、車での移動中も目を愉しませてくれます。
完全予約制ではありましたが、多くの方々に来ていただくことができました。
今回快くお引き受けいただいたお施主さんには本当に感謝です。
この家は東京在住の御夫妻が移り住むための終の棲家。
転勤が多いご家庭に育ち、世界各国で住んだ家は御夫妻ともに20軒を超えます。
ご結婚されてからも、ともに世界を巡り、過ごされた時間はまるで旅のようです。
軽井沢の地は、御夫妻にとって旅の集大成。この家は文字通り最後の家になることでしょう。
その物語の一部に設計者として関わらせていただけたことは私にとって大変光栄なことでした。
11月の軽井沢はかなり寒くなっていますが、室内は薪ストーブ1台でもかなり暖かいです。
家具や小物もお施主さんが丁寧に選ばれたもの、薪ストーブからは薪が燃えていく音が微かに聞こえ、
生活の余韻を感じさせます。見学に訪れた方はここがモデルハウスのような商業的住宅とは違う、
住まいに大切なことは何かということをそれぞれに感じ取っていただけたようでした。
夜にはこの家と庭づくりに関わったすべてのメンバーが長野、福岡、東京から集まり、
奇跡のような楽しい時を過ごしました。この幸せな時間がきっとこれからもこの家には残り続け
てくことを確信した瞬間でもありました。
みなさん、本当にありがとうございました!!
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今日から10月となりました。未だ夏の余韻が残っている感覚があります。
少し前のことになりますが、9月から新事務所に拠点を移しました。
場所は小田急線「豪徳寺駅」から徒歩1分となります。
みなさまとお話ができる時間を大切にしたいと思いから、オフィスの雰囲気ではなく
ゆったりとくつろげる住宅のような空間に仕上げました。
家に遊びに来る感覚で、みなさまのご来店を心よりお待ちしております。
尚、住所と電話番号が変更となりました。※メールアドレスは変更ございません。
今後共どうぞよろしくお願いします。
↓
新事務所(TSUBOI+ARCHITECS OFFICE)
〒154-0021
東京都世田谷区豪徳寺1−43−1 森ビル4階
TEL 03-6804-4240 FAX 03-6804-4241
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世田谷の家はお引渡しの前日、竣工写真撮影を行いました。
2年ほど前からお願いしている建築カメラマンの小林さんに来ていただきました。
当日は台風5号が関東の真上を通過する予報でしたので、この日の撮影はほぼあきらめていたところ、
予想に反して朝から快晴!灼熱の天候の中での撮影となりました。炎天下で二人で汗だくになりながらの
撮影です。
小林さんは建築を専門に撮影するカメラマン。
こちらの設計意図や住宅の見せ場などを瞬時に理解し、独特な目線でカットを切っていきます。
彼の写真の好きなところは、いかにも建築写真家が撮影した映像作品にならないところ。(ココ褒めてます)
直接会わない施主さんへの配慮を忘れず、撮影する側の主観ではなく、この家の良さが何であるかを
写真というフィルターを通して施主さんにお伝えするという小林さんの向き合い方に共感します。
建築は動かないもの。それをじっと撮影するのは簡単なようですが、そこにある空間をどう切り取るか。
また空間という人の感性に委ねられる現象をどう捉えるのか。光、素材、奥行をどのように表現するのか。
知れば知るほど奥の深い世界です。
個々の現象に偏りすぎれば、偏った視点からの映像になります。それも映像作品としてはおもしろいです。
でも、それは建築(空間)の限られた側面での視点でしかなく、狭い価値の中だけで写真を表現することは
見る側の「共感」を得られる範囲も自ら狭めることにもつながります。
小林さんの写真は、誤解を恐れずに言えば、素敵なお見合い写真を撮るような感覚です。
人生1度の家づくり。飾らず、ありのままの姿を素直に伝え、自分では気づかない魅力を丁寧に写し取る。
出来上がった写真を見るたびに、これは1本とられた。。と思います。
次回も小林さんに写真をお願いしようと思います。
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世田谷で設計・監理をすすめていた住宅が完成しました。
「Blue shaftの家」と名づけようと思います。
Blue=青、shaftは動力・伝達用の回転軸という意味があります。
この住宅には屋上までつながる階段シャフトがあります。
シャフトの中にはまわり階段があり、この家のすべての層を貫き
上下階への人の動線や、光と風の動きもコントロールします。
都会の住宅地では、南からの日照や、季節風の取り込みなどすべて教科書どおりにできるとは
限りません。住宅街の中を抜ける風の方向や、光の入り方は他の建物の影響も多く、
予想どおりにはいかないことも少なくありません。
その状況判断は設計に関わる重要な要素であり、高層になる建物の1階にいかに光を届けるか、
またどのように風を取り込むかは、立体的なアイデアが必要になります。
今回は少ない窓でも効果的な明るさの確保と風の抜き方を検討の中心に据えてみました。
結果的に、1階から取り入れた新鮮空気を木の幹のようにシャフトを通じて室内全体に広げるという
シンプルかつ効果的なアイデアを思いつき、設計のコンセプトになりました。
人の身体と同じく、このシャフトが体の中心を貫通する背骨のような役割。
その循環が人の健康を保ち、家全体によい血流を促すことにつながります。
また、屋上から取り込まれた光はシャフトを通じて上から下へ、壁を乱反射して
他の室内の空間に光を送り、間接的な明るさを得ています。
これも自然の力を利用したパッシブなデザイン手法としての1つの提案です。
完成した家を見て、設計時にイメージしたアイデアがうまくいったことを実感できました。
風が通り抜ける格子の建具
階段シャフトから光と風を取り入れる。リビングへとつながるガラス戸
階段シャフトは屋上までつながっています。
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このたび新事務所へ移転することになりました。
7月に内装工事を行い、本日引渡しです。工事を担当してくれたみなさんに感謝です。
9月より、心機一転この場所で再スタートする予定です。
現在の事務所が少々手狭となり、予てから移転先を探していました。
移転先を探しはじめて約1年、いろいろな方とのご縁があり、この場所に決めることにしました。
新しい事務所は小田急線「豪徳寺駅」徒歩1分。
「森ビル4階」となります。ちなみに名前で決めたわけではありません(笑)
8月は移転月間とし、移転完了後にまたご報告させていただきます。
お近くにお越しの際は、是非お立ち寄りください。
今後共よろしくお願いします。
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世田谷の家の工事も残りあとわずか、
8月上旬に完成を迎えます。
本日は指定確認検査機関の完了検査。建築基準法の適合検査となります。
検査員とともに、私も設計者として立ち会います。
当たり前ですが、無事に合格しました。
竣工引渡し前は、各種申請や検査、現場の調整など
とにかく忙しくなります。もう暑いとか言ってられない。。
お施主さんに笑顔でお引渡しを受けていただくために、
現場と力をあわせてラストスパートです!
さ、お水飲もう。。
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2015年に建物の完成を迎えた軽井沢の家。
ゆっくりと進んだ外構工事と植栽工事は、この夏にようやく完成を迎えます。
お庭の工事はガーデンデザイナーの溝口さんが担当。本日も福岡からやってきてくれました。
建築工事を担当したハシバテクノスの丸山さんと上條さんも参加してくださり
お庭工事の最終段階をみんなで見届けてきました。
この家は施主のMさん御夫妻の終の棲家としてつくられました。
定年後に東京から居を移されるそうで、軽井沢に暮らすのが昔からの夢だったと話してくださいました。
少しづつご自身の夢を実現されているMさん御夫妻。本当に素敵だと思います。
ウッドデッキや渡り廊下、目隠しの塀や植栽が加わりました。
建物だけだったときよりも、緑が入ると風景が格段によくなり、庭の緑に主役の座を譲るときが
やってきたようです。秋にはこの緑は赤や黄色に染めあがり、きっと美しい風景を見せてくれることでしょう。
秋の紅葉の季節にまたこの家の景色を見に来たいと思います。
室内の延長にウッドデッキができました。視線が自然と外へ向かいます。
夏は外のリビングですこし遅めの朝ごはん、ブランチとか最高ですね(笑)
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高知・香川の夏の旅。本日がいよいよ最終日となります。
直島から高速船に乗ってお隣りの豊島(てしま)に降り立ちました。今回の旅で特に楽しみしていたのは、
ここ豊島美術館(てしまびじゅつかん)を見ることでした。現代美術家、内藤礼の美術館です。
内藤礼の美術作品はとても繊細で内向的、直感的な美しさがあります。妻が大好きな作家です。
まず、この美術館には展示品がありません。まるで液体がそのまま固まったような白い丘。
大きな生き物のように空に向かって開いた口。内部はあるのはモノトーンの洞窟のような空間、
直感的で限りなく自然に近い場所。
事前に写真で見てはいましたが、実際に見てこれほど心揺ぶられる空間には久しく出会っていません。
この場所を訪れて涙が出たという話を聞きます。本当に美しい空間でした。
まさに内藤礼の世界がそこに表現されていました。
また美術館のまわりの回遊歩道(シークエンス)がとてもよかった。
豊かな自然や景色の中を通り抜ける遊歩道、島の景色をゆったりと眺めながら入口へと導かれていきます。
駐車場からすぐに入れるような建物のつくり方とは真逆の手法。
美術館を訪れた人たちへのおもてなしのように感じます。
豊島に来ると、さきほどいた直島のほうがまだ都会に思えてしまうほど利便性には乏しい場所。
港から循環バスが走ってはいるものの、本数も少なく、島の中を移動するには足がないと大変です。
港で教えてもらったレンタカー屋さんで車を借り、島の中をめぐることにしました。
ちょうど空いている車が1台あるということでギリギリセーフ。。
レンタカー屋のおじさん(あきさん)はとても親切な方で、まるで島の観光案内所のように、手書き
の地図で美術館への行き方や滞在時間、おすすめのルートなど細かく教えてくださいました。
「ところでお昼ご飯はどうする?」ということで、行きたい食堂を伝えると食堂に予約の電話をしてくれました。
あきさん、ありがとう。
島の食堂101につきました。小さな民家が食堂になっています。
女性店主の家庭的であたたかい雰囲気のお店です。
その時期に島で採れた有機野菜を主人のセンスで料理してくれます。
オーガニックでとてもおいしい島ごはん。大人向けの味付けでしたが、娘もおいしそうに食べていました。
お店のご主人にも本当に親切にしていただきました。直島に戻る船の時間にあわせて港へと向かいます。
この3日間、いろいろなアートや美術館をめぐり、瀬戸内アートプロジェクトを
実際に体験し、中身の濃い旅をすることができました。
もうひとつ、この旅でよい経験ができたのはこのアートプロジェクトに関わる町の人たちとのふれあいでした。
今では多くの観光客を呼ぶまでに成長したこのプロジェクト。瀬戸内の島々はお互いに協力しあい、
それに賛同する企業やアーティスト、建築家などがその手助けとして関わり、世界へと情報発信する取り組み
の中で培われた理想的なコミュニティの形がそこにありました。地元の人々の視点と外部からの客観的な視点の融合。
過疎化が広がる全国の地方都市や島々の現実。これに向き合うひとつの答えを見たような気がします。
レンタカーのあきさんから、「またおいでよ。この島の人間はみんなが喜んで帰ってくれるのがうれしいんだ」
と最後に声をかけてくださいました。短い時間でしたがみなさん本当にお世話になりました。
いつか、この瀬戸内の島々にまた会いに来たいと思います。
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2日目の朝、高松港からフェリーで直島へ向かいます。
今、瀬戸内海周辺では「瀬戸内アートプロジェクト」という大規模な事業が展開されています。
3年に一度開催される「瀬戸内芸術祭」にはこの島々に世界中から多くの観光客が訪れ、
今では世界から注目を集めるアートの聖地へと成長しました。
その入口となる直島は、港のターミナルや町役場、美術館やホテルなどを著名な建築家が手がけ、
島の中には現代アートの作品がいたるところに展示されています。
町役場の周辺地区は民家を改造した「家プロジェクト」というアーティストの作品群が集結し、
そこだけでも相当見ごたえがあります。
また、直島の近隣に位置する豊島(てしま)や犬島(いぬしま)にもすばらしい建築やアートの
展示エリアが展開され、すべて見るには数日は滞在しないとまわりきれません。
観光パンフレットも世界から来られる観光客向けに日本語と英語で表記され、ビジュアル的にも
素敵なデザインに仕上がっていました。
直島港に降り立つとまず出迎えてくれるのは、草間彌生の赤かぼちゃのオブジェです。
妻と娘は草間作品のファンということもあり、この出迎えにはとても興奮していた模様。。
夜になるとライトアップされるらしく、昼間とはまた違った楽しみ方ができます。
そんな訳で今日は港近くの宿に泊まることにしました。
港周辺にはこのようなオブジェが展示されています。夜景もとても美しい。
見るだけでなく、中に入れてくつろげる彫刻。というのも魅力です。
こちらは町の中にある集会所。
伝統的な入母屋屋根や木格子など古典的な和のデザインを使いながらも、
全く新しい現代建築になっています。
ここで町の主要な行事、成人式や冠婚葬祭などが行われます。
また直島には建築家の安藤忠雄氏が手がけた3つの美術館があり、
併設する宿泊施設が点在します。そのほとんどは撮影がNGなので写真はありませんが、
特筆に値するのは、「地中美術館」これは本当によかった!
全貌がほぼ地中に埋まっている美術館ですが、海外の名美術館にも引けをとらない
本当にすばらしい美術館でした。
安藤忠雄氏の底力のようなもの改めてを感じることができました。
直島めぐりをしたあとは、地元の銭湯へ。。(直島銭湯I♥湯)
これもアートプロジェクトの名所。もう外観からしてタダモノではありません。
このセンス、まさに大衆アート!独特な世界観におどろきです。。
正面に見えるのが番台で、店主がオリジナルTシャツを着てお出迎えしてくれます。
外国人観光客もジャパニーズ銭湯!と大喜びです。
いや、ちょっと違うんだけど。。とつぶやきながらも、とても楽しかったので
よしとします(笑)
7月の平日ではありましたが、直島宮浦港には多くの外国人観光客がいて
バスの運転手さんや食堂の方、島の人々が独自の英語でコミュニケーション
している様子は見ていて微笑ましかった。
→豊島(てしま)につづく
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牧野富太郎記念館のすぐ近くに、五台山竹林寺があります。
その境内の奥に、昨年建築学会賞を受賞した竹林寺納骨堂があります、建築家の堀部安嗣氏の設計です。
この建築は今回の旅で是非訪問してみたかった場所の1つ。堀部氏の建築にはどこか寺院や古建築に似た
重厚感と静寂さ。他の建築にはない品格を感じます。数学者である父親の影響なのか、設計には幾何学を
用いることも多く、美しい解き方への挑む姿勢、ご自身の建築への美学がそこにはあるように思います。
納骨堂という建物の性格上、表に建つ建築ではありません。また骨が収められる厳粛な場であり、
自然と人間との関係、宗教的死生観に及ぶこの建物の特性は設計にも相当な難しさがあっただろうと想像します。
そのような課題とどう向き合ったのか、同じ建築設計をしている立場としてとても興味がありました。
境内の脇から入る細い道を歩いていくと、道の奥にその姿が見えてきます。
思った以上に小さな建物。というより小さく見える建物です。
凛とした佇まい。水平に延びる屋根の軒先はまるで紙のように薄く、この世の建築ではない錯覚すら覚えます。
その薄い軒先はとても低く構えられ、軒下空間には整然と柱が立ち並びます。
この構成はスウェーデンの建築家アスプルンドの「森の礼拝堂」を彷彿とさせます。
森の火葬場の中にある小さな礼拝堂で、世界的にも有名なアスプルンドの代表作です。
道には素朴な踏み石が敷かれ、アプローチは道から1mほど下がっています。
低い軒先に向かって自然と頭を下げて入る演出。
また建物を極限まで低く見せることで、主張せず、この場所を借りているという謙虚さが
自然と人間との関係を表しているようにも思えます。
写真はありませんが、この建物の奥には小さな中庭があり、
昼間は誰でもその庭に来てくつろぐことができます。
この場所が好きでよく本を読みにきている人もいるようです。
納骨堂を近寄りがたい雰囲気とはせず、自然と人が関わり、この世の延長としての憩いの場と
したことは、この建築の特にすばらしいところではないかと思います。
10年ほど前にスウェーデンの森の礼拝堂を訪れたことがあります。
墓地には生き生きとした森が広がり、その中の小さな礼拝堂は人々の憩いの場となっていたのを思い出します。
スウェーデンと日本では宗教観や死生観は違えど、自然と人間が共存する考え方は似ているのかもしれません。
この課題への堀部氏の解き方はとても美しいと思いました。
設計者である自分が前面に出ることも極力控え、謙虚でありながらも強く、大変美しい建築でした。
→直島・豊島の旅へつづく
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7月某日、高知・香川への旅をしてきました。
家族と過ごす夏の旅。娘も5才になり、いろいろなことがわかる年齢になってきました。
そこで今回旅先に選んだのは四国地方。高知、香川(直島・豊島)建築とアートをめぐる旅です。
うちの場合、こどもにあわせた旅行はしません。私たちと一緒に課外学習のつもりで娘も自分なりに
何か感じるものがあればよいと思っています。言葉で伝えるより、一緒に何かを経験する時間を
大切にしたいと思います。これも建築家の娘として生まれた宿命ですので仕方ありません(笑)
今回の旅は3日間を予定し、初日に高知、2日、3日で香川(直島・豊島)をめぐります。
高知には、内藤廣氏が設計した牧野富太郎記念館と、昨年に建築学会賞を受賞した堀部安嗣氏設計の
竹林寺納骨堂があります。この2つははずせないルートとして、スケジュールに入れました。
牧野富太郎記念館には個人的な思い入れがあります。この記念館は18年前に完成し、私個人としてここを訪れるのは
今回で2回目です。今から20年前にこの記念館の設計時期に私は内藤廣先生の事務所にお世話になっていました。
そこで毎日この建物のスタディ模型を担当していた時期があります。
当時内藤先生は超多忙な建築家で、大きな仕事をいくつも抱えていました。
その中でもこの牧野富太郎記念館には相当な力を入れていて「今の日本で最も難易度の高い建築、後世の人々に残す
意味のある建物をつくる」と私たちに話してくれたことがあります。
内藤先生とはほとんど話をすることはできませんでしたが、この建築の計画に関わることで内藤先生の建築に向かう
姿勢やその意味を学べたことは今でも本当によかったと思っています。
そんな経験から、いつか自分のこどもにもこの建築を見せたいという思いがありました。
牧野富太郎記念館は植物学者の牧野富太郎先生の記念博物館です。
牧野先生が発見した植物の数ははかりしれません。小さな美しいものを大切にする植物へのまざざし、
その功績を後世に伝えていくための建物です。
高知の杉をつかった有機的で大胆な架構。鉄骨の背骨から肋骨のように延びる木造垂木。
山の稜線を低く這う生物のような形態。日射が強く、台風の多いこの地方の風への影響を考慮した
最も合理的な屋根構造になっています。
牧野先生がこよなく愛した植物たちが主役であり、建物はその影に隠れるように。
完成当初はまだ未熟だった庭木は今では建物の高さを追い越し、建物の入口が木々の間からひっそりと見え隠れしています。
「いずれ自然の中に埋もれていくような建築の姿を目指したい」そう内藤先生が語っていたことを思い出します。
18年ぶりにここを再訪し、前回とはまた違った意味で発見や考えることがいろいろありました。
建築と自然が幸福な関係を築いている場所。娘にも何かを感じてくれたらよいと思います。
→竹林寺納骨堂へとつづきます。
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