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DIARY-TSUBOIARCHITECTS OFFICE
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歴史を引き継ぐ意思

数日前のこと、パリにあるノートルダム大聖堂の火災が報じられた。

 

改修工事中に起きた火災で、ニュースではノートルダムの尖塔部分が激しく燃え落ちる様子が映し出されていた。

ノートルダム大聖堂といえば建築に詳しくない人でも一度は聞いたことがあるほど、

12世紀に建てられたゴシック様式の最高傑作である。ユネスコ世界遺産にも登録されている。

建築を学んだ人であれば独特な構造様式であるフライングバッドレスのことを知らない人はいないだろう。

私もパリを訪れた際にノートルダム大聖堂は見学した覚えがある。一報を聞いて大変残念な気持ちになった。

 

火災から2日後、フランス政府は大聖堂の再建に向けて早々に発表を行った。

事態は深刻なものの、再建に向けて動き出したフランス政府の対応はとても迅速だ。発表の内容を聞いて驚かされた。

大聖堂の再建に向けて、世界の建築家から再建案を募るという大胆な構造だ。今回燃え落ちてしまった尖塔部分は、

提案があれば復元しなくても構わないという。もちろん現状の復元案もあってしかるべきとしているが、

新しい要素を加えることも厭わないというのだ。ちょっと日本では考えられないような判断だ。しかも2日で。。

 

実は歴史的街並みや建造物を多くもつヨーロッパの国々では、長い歴史の中ではたびたび起こる話だったりする。

日本でも過去の歴史の中で起きた戦争や天災などの理由で歴史的建築物が焼失したり破損したりすることがある。

このようなことがあるたびに、その時代の人たちの力によって再建を果たしてきたことも含めて、

歴史的建造物としての評価がなされてきた。100年単位で残る建築は残そうとしたその時代の人々意思の結晶である。

そして火災や改修のタイミングでその時代にふさわしい建築へとリニューアルを遂げてきた。

それはノートルダム大聖堂も同じである。

 

今回の火災が横に広がらなかった要因として、中央の大きな吹き抜けが功を奏し、火や煙を上から抜けたことや、

構造体を外に出す形式であるフライングバッドレスが中央の空間を両側から支えているおかげで、構造の倒壊をまぬがれているようにも見える。

これは歴史の中で繰り返し起きた火災などを教訓としながら、当時の建築の安全を守るために考え出されてきたものだろう。

防火の考え方がデザインや空間のあり方にも大きな影響を与えているのかもしれない。

 

大聖堂の火災は大変残念なことだがフランス政府が迅速に判断をした背景には過去の歴史や文化に対する敬意と、

現代を生きる我々もその歴史の波の一部にすぎないことを理解した上で、受け継いだ文明を積極的に引き継ぐという思考が働いたのだろう。

歴史的建造物はいつの時代も文明を動かしていく役割を果たしていくものだからだ。

 

日本でも歴史の中で同じようなことがたくさんあった。

今残っている歴史的建築物は、完成当時は時代の最先端を走っていたものだ。

つくった人々の意思も含めて、長い間受け継がれてきた。

保守的な意見として伝統的なものは有無を言わさずそのまま残すべきだ。と言う人もいるかもしれないが、

その時代の思想のもとに改良を重ね、次の時代への発展の根を植えつけ、文明を引き継いでいくことが、

本来の意味での伝統といえる。そのような意味で様々な分野で伝統論争は日本でも昔からずっと行われてきた。

昔の棟梁や日本建築を築いた偉人たちはきっとそのような思いを持ってその建築物を創ったに違いない。

 

最近日本では歴史・文化的に見て大変貴重な建築物でも、その価値についてろくに調査もせずに、

政治的な理由だけで簡単に取り壊してしまっている。とくに公共建築物にその傾向が強い。

次世代へのレガシーということが盛んに言われはじめているが、まだまだ経済原理が最優先で、

根底ではその意識にはほど遠いように見える。歴史や伝統というのは今の日本人にとっては単なる学識として

覚える対象でしかなくなってきているのだろうか。

ノートルダム大聖堂の火災と再建の報道は同じ時代を生きるものとして歴史意識の違いを感じる出来事だった。

 

 

 

posted by Toki Tsuboi | 19:03 | 建築のこと | comments(0) | - |
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