高知・香川の夏の旅。本日がいよいよ最終日となります。
直島から高速船に乗ってお隣りの豊島(てしま)に降り立ちました。今回の旅で特に楽しみしていたのは、
ここ豊島美術館(てしまびじゅつかん)を見ることでした。現代美術家、内藤礼の美術館です。
内藤礼の美術作品はとても繊細で内向的、直感的な美しさがあります。妻が大好きな作家です。
まず、この美術館には展示品がありません。まるで液体がそのまま固まったような白い丘。
大きな生き物のように空に向かって開いた口。内部はあるのはモノトーンの洞窟のような空間、
直感的で限りなく自然に近い場所。
事前に写真で見てはいましたが、実際に見てこれほど心揺ぶられる空間には久しく出会っていません。
この場所を訪れて涙が出たという話を聞きます。本当に美しい空間でした。
まさに内藤礼の世界がそこに表現されていました。
また美術館のまわりの回遊歩道(シークエンス)がとてもよかった。
豊かな自然や景色の中を通り抜ける遊歩道、島の景色をゆったりと眺めながら入口へと導かれていきます。
駐車場からすぐに入れるような建物のつくり方とは真逆の手法。
美術館を訪れた人たちへのおもてなしのように感じます。
豊島に来ると、さきほどいた直島のほうがまだ都会に思えてしまうほど利便性には乏しい場所。
港から循環バスが走ってはいるものの、本数も少なく、島の中を移動するには足がないと大変です。
港で教えてもらったレンタカー屋さんで車を借り、島の中をめぐることにしました。
ちょうど空いている車が1台あるということでギリギリセーフ。。
レンタカー屋のおじさん(あきさん)はとても親切な方で、まるで島の観光案内所のように、手書き
の地図で美術館への行き方や滞在時間、おすすめのルートなど細かく教えてくださいました。
「ところでお昼ご飯はどうする?」ということで、行きたい食堂を伝えると食堂に予約の電話をしてくれました。
あきさん、ありがとう。
島の食堂101につきました。小さな民家が食堂になっています。
女性店主の家庭的であたたかい雰囲気のお店です。
その時期に島で採れた有機野菜を主人のセンスで料理してくれます。
オーガニックでとてもおいしい島ごはん。大人向けの味付けでしたが、娘もおいしそうに食べていました。
お店のご主人にも本当に親切にしていただきました。直島に戻る船の時間にあわせて港へと向かいます。
この3日間、いろいろなアートや美術館をめぐり、瀬戸内アートプロジェクトを
実際に体験し、中身の濃い旅をすることができました。
もうひとつ、この旅でよい経験ができたのはこのアートプロジェクトに関わる町の人たちとのふれあいでした。
今では多くの観光客を呼ぶまでに成長したこのプロジェクト。瀬戸内の島々はお互いに協力しあい、
それに賛同する企業やアーティスト、建築家などがその手助けとして関わり、世界へと情報発信する取り組み
の中で培われた理想的なコミュニティの形がそこにありました。地元の人々の視点と外部からの客観的な視点の融合。
過疎化が広がる全国の地方都市や島々の現実。これに向き合うひとつの答えを見たような気がします。
レンタカーのあきさんから、「またおいでよ。この島の人間はみんなが喜んで帰ってくれるのがうれしいんだ」
と最後に声をかけてくださいました。短い時間でしたがみなさん本当にお世話になりました。
いつか、この瀬戸内の島々にまた会いに来たいと思います。