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DIARY-TSUBOIARCHITECTS OFFICE
最近読んだ本から

フィンランドの歴史2.jpg

 

コーヒータイムの読書。最近忙かったのでほとんどできていなかったのですが、

また再開することにしました。

 

北欧の歴史について書かれた本、物語フィンランドの歴史を読んでいます。

歴史について書かれているのに、「物語」であるというこの本のタイトルが気に入りました。

なるほど、歴史とは壮大な物語を読むことに似ています。

 

北欧は、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、アイスランドの5カ国で構成されています。

よくSCANDINAVIA(スカンジナビア)といわれることがありますが、現地ではNORDIC(ノルディック)と表現されます。

フィンランドはもともとスウェーデンの一部であり、ソ連に統治されていた時代もあります。

フィンランドという国が誕生したのは20世紀に入ってからで、ヨーロッパの他の国々がそうであるように、

フィンランドも隣国との争いの中で独立を果たしました。

2017年には独立100年を迎え、国としての歴史はまだ浅いですが、そのルーツはとても興味深いです。

 

日本では、華やかなインテリア、充実した福祉、人を中心に据えた教育、IT先進国、フィンランドについて

とかくよいイメージをもつことが多いですが、戦争による侵略や、北極も近く、厳しい自然環境の中での暮らし

そこから生まれた独特な自然信仰や思想、それらがフィンランド人の特性や国の成り立ちに大きな影響を与えています。

 

著者の石野裕子さんには、私が所属する北欧建築・デザイン協会でもレクチャーをしていただいたことがあります。

石野さんは民俗学がご専門で、フィンランドとの縁はほんの偶然だったといいます。

ご自身では北欧のインテリアが特別好きとか、ムーミンもそんなにかわいいと思ったことがない、

フィンランドについて研究をはじめておきながらそんな自分を軽く呪ったこともあると(笑)

個人的な偏った感情がなかった分、ニュートラルにフィンランドを捉えることができた。

そうおっしゃっていたのを思い出します。はじめから北欧が好きということになぜかしっくりこない。

その感覚は言われて腑に落ちるような気がします。気がつけば関わるようになっていた。

フィンランドの魅力ってそのようなものかもしれません。

歴史の本はとかくカタい文章になりがちですが、この本では石野さんの観点からとてもわかりやすく書かれてす。

フィンランドの歴史について知りたい方、おすすめの一冊です。

 

 

posted by Toki Tsuboi | 16:54 | 好きなこと | comments(0) | - |
風の谷のナウシカ

先日、テレビで風の谷のナウシカの再放送がやっていた。

もう何十回も観たけれど、不思議とまた観てしまう。私にとってこの作品は特別なものだ。

作品内容についてここで詳しく書くことはしないが、この作品は映画で広く知られており、原作本においては全7巻で構成されている。

映画は原作2巻までの内容で完結しており、原作ではまだその先の物語が続いている。

 

ナウシカが私にとって特別であることについていえば、この作品全体を通して描かれている「共生」の世界観が

私の心に深く残っているからである。この作品で描かれた宮崎駿の「共生」はとても困難で矛盾に満ちたものだ。

その矛盾に向き合うことこそが、「共に生きること」を描くためにどうしても必要だったと宮崎駿は言っている。

 

映画を観た多くの人は、ナウシカという少女のひたむきな姿に、自然と人間の共存について純粋な心と

人としての倫理観のようなものを重ねて観ることだろう。

しかし、宮崎駿が本当に描きたかったものは、当時の映画の中ですべて表現することは難しかったようだ。

宮崎駿の描く「共生」とは単純な倫理観とは一線を画している。

原作本を読むと映画とは異なるナウシカ自身の苦悩が詳細に描かれていることがわかる。

 

原作ではナウシカは腐海についての研究を深めていく。はじめは腐海の毒から人間を守り、

腐海の毒による村人の病を治療することが目的であったが、腐海のついて知ることは、つまりは人間そのものを知ることであることに気づきはじめる。

人間が汚した自然。腐海は人間の世界の写鏡であり、それをもとに戻すことは、人間の存在を否定してしまうという結論に至る。

「自然」とは人間がコントロールできる範囲の世界。それが人間にとって「自然」の本当の姿なのだ。

 

驚いたのは人間には腐海の毒は必要なものであり、その毒がなければ人はもはや生きていくことができないという逆説である。

人間にとって本当の毒は人間のもつエゴであり、つまりは人間の敵は人間なのだ。


生きる世界が異なるもの同士。見方によって善や悪への考えは全く異なる。敵と味方は立つ位置が違えば結果は180度変わる。

共に生きること、その不可能な問にナウシカは苦悩する。碧き清浄の地は「人の創り出した幻想」であり、

その幻想は人間の身勝手さの象徴であるという現実。その現実に向き合い、それでも共存の道を切り拓くことこそが

宮崎駿の表現したかった「共生」への思いなのだ。

 

他にも宮崎駿の作品の中にはこの「共生」の思想が深く関わっている。

ナウシカという作品に出会ったことで、私自身もそのことを理解するようになった。

自分の生き方という根源的な問い、日常生活の些細なこと、仕事への考え方にも当てはまることはたくさんある。

人生とは他者との自分の共生の歴史でもあるとも言える。

「他者」を理解しようとする意識。その意識からはじまる世界のありかたを想像する。

自分たちが生きるこの世界の中で、考えるための苗を、ナウシカから分けてもらったような気がしている。

それが徐々に根を張り、自分にとっての「共生」の思想を育てていけたらと思う。

 

 

posted by Toki Tsuboi | 14:46 | 好きなこと | comments(0) | - |